むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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A Perfect Circle / Eat The Elephant

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A Perfect Circle / Eat The Elephant


USのオルタナティヴ/ヘヴィロックバンドによる4作目フルレングス。


完璧なまでの美しさを湛えた作品です。
ToolのMaynard James Keenanを中心とするバンドで、15年近く沈黙したままだったので久しぶりのアルバムですね。
そもそもTool自体も全く精力的だったわけでなく、Maynard自身音楽よりワイン中心に活動していた記憶が強かったので、APCの新譜を聴けるとは思ってもいませんでした。
その久方ぶりの新譜ですが、ブランクを感じさせない凄まじい完成度を誇ります。
今作は、1stにあった重厚さ、2ndの不気味さ、前作の邪悪さはそれほどありません。
それらの要素をエッセンスくらいに忍ばせ、優雅さが前面に出ています。
過去作品の要素を均等に感じさせながらも新味をしっかり上乗せしているため、全くの新しい領域に立ったことを示しているんです。故にポップな側面も今まで以上に出ているのに、APCらしいヘヴィネスが健在なのも嬉しい。
メランコリーを強調したピアノの美しさにため息が出る現代美術のようなM-1“Eat The Elephant”で聴けるような優美さが今作最大の特徴。
Maynardの歌唱力は更なる高みに達していて、特有の美声は勿論、中性的なタッチも駆使しています。
Toolで聴けるようなロングトーンの壮絶なスクリームは聴けませんが、ラウドなベースがゴリゴリな前半から一気に静寂の世界へ引きずり込むM-2“Disillusioned”、鋭いドラムが図太くもアンビエントな世界に響くM-3“The Contrarian”、神秘的な音響に凶暴なVoとリフが響く原始的なリズムも鋭いM-4“The Doomed”と前半だけでも濃厚な世界にどっぷり浸れますね。
APCでは最高にポップネスが弾けるM-5“So Long,And Thanks For All The Fish”に驚く人も多いのでは。
M-7“By And Down The River”に顕著な悲哀メロディーから従来のAPCらしさが出て来ます。
重たく引きずるようなベースが中東音楽のような情緒に効いているM-8“Delicious”、ヒステリックなシンセが鳴り響き歯切れのいいVoが胡散臭さを増すラウドなM-10“Hourglass”の新鮮さもスパイスになっています。
ストレートかつ奇妙に捻れたギターが楽しめるM-11“Feathers”、抜けのいいドラムを強調した空間にVoの美しさとノイズが木霊するM-12“Get The Lead Out”のポストメタル的音響処理も見事に時代を捉えています。
様々な要素が溶け合って底の見えない奥深いロックアルバムに仕上がった、A Perfect Circle最高傑作だと思います。
Toolの制作もはじまっているので今作を引っ提げた大規模なツアーはやらないと思いますし、今作がラストアルバムになる可能性も高いですが、凄まじく美しい作品が生まれたなという感慨が湧きました。
即効性には乏しいですが、じわじわと遅効性の猛毒が滲んでいくような中毒性がありますよ。
タイトルは象なのに、ジャケットは何でタコなんでしょうね。


1. Eat The Elephant
2. Disillusioned
3. The Contrarian
4. The Doomed
5. So Long,And Thanks For All The Fish
6. TalkTalk
7. By And Down The River
8. Delicious
9. DLB
10. Hourglass ★
11. Feathers
12. Get The Lead Out
(2018/BMG)
Time/57:00