むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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赤いくらげ / 赤裸々

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赤いくらげ / 赤裸々


日本のガレージパンク/ガレージサイケバンドによる初フルレングス。


「ああ、The Stoogesの“Raw Power”だな」と思える暴力的でグラマラスなアルバムであり、行き場の見失った若さが大暴走していく凄まじい熱量があります。
去年から今年にかけてはいわゆるライオットガールズ次世代の当たり年で、USのStarcrawlerやUKのWolf Alice、Dream Wife、Goat Girlなどが脚光を浴びています。
そのラインナップに、是非とも日本からはこの赤いくらげを入れたい。
愛らしく病んだルックスから放たれるひしゃげたがなり声がかなりのギャップを生む夏生(Vo/G)の世界観は、生々しくも文学的陰影に富んでいます。
彼女の世界観に説得力を持たせているのが官能的とすら言えるうねりを持つベースと、かなり突貫しながらも巧みに曲を支えるアグレッシヴなドラム。
この二つの要素が、暴力性を増幅させながらも聴きやすさを増しているのが面白いです。特にドラムは四つ打ちでダンスロック的グルーヴを生んだりしていて、この音楽性にこのパターンを組み込むとかよく考えつくなと。
ギターリフも非常にシンプルで、かなりキレていて非常にかっこいいんですよ。
彼女の1コードで捩じ伏せる荒々しさはM-1“クレイジーマシーン”からライヴテイクの最終曲M-12“どうしましょ?”まで一貫していて、ライヴの熱量と初期衝動を丸ごと封じ込めたようなテンションの高さに直結しています。
這い回るベースを尻目に「頭が悪いの一人だけ!」とがなり立てるハイエナジーパンクM-2“カバ”でも無理矢理サイケなパートを突っ込んでみたり、ラリったようなクリーンで演出する不気味でへヴィなサイケ空間が一気に凶暴に唸りを上げるM-5“鳴らないガガ”、不安定ながらも情緒のあるクリーンVoでしっとり聴かせる今作でのバラード的位置付けであるM-9“愛情”のとんでもない名曲感といったアルバムの構成力も素晴らしいです。
色気たっぷりに跳ねるベースラインに絡むギターをひしゃげたVoで粉砕する毒気に塗れたM-3“猿”、疾走するキャッチーなガレージサイケパンクM-4“アイデア”、圧倒的にラウドでヒリヒリしたギターリフとベースのグルーヴで泣く子も黙らせるアンセミックなM-6“嘘つき”、小気味良くパンキッシュに疾走するRamonesを思わせるM-7“砂の山”、先行カットされた極彩色のギラつき捲し立てるVoが酩酊させるガレージパンクM-9“ジオラマ”、作中最もキャッチーなリフとひたすらがなり立てるがなり声で頭がおかしくなりそうなM-10“わがまま”、NYパンクとグラムロックのふくよかで色気たっぷりに聴かせるM-11“赤い錠剤”といった暴走する熱量が最大の魅力であることは明白。
パンク/ハードコアのアンダーグラウンドな何かどえらいことをやりかねない佇まいといい、エログロなサブカルチャー的雰囲気といい、「何かよくわからんけどすげえ」と思わせる謎の存在感を持った作品です。
ライヴテイクM-12“どうしましょ?”のMCは毛皮のマリーズ時代の志摩くんをふと思い出しました。
この曲はスタジオテイクで完成させて欲しかったと思いますが、そんなことはどうでもいいのでとんでもない作品なので聴いた方がいいですよ。


1. クレイジーマシーン
2. カバ
3. 猿
4. アイデア
5. 鳴らないガガ ★
6. 嘘つき
7. 砂の山
8. 愛情
9. ジオラマ
10. わがまま
11. 赤い錠剤
12. どうしましょ?
(2018/らいおっとレーベル)
Time/46:50