むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Idle Hands / Mana

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Idle Hands / Mana


USのエピックメタル/ゴシックロックバンドによる初フルレングス。


非常にユニークな作品です。
彼らの音楽性を端的に表現するならば、メタルバンドがThe Cureの曲を演奏しているような感覚を味わえます。
美しく歪んだ音色で耽美な音世界を削り出すような丹念な仕事振りは、M-1“Nightfall”に凝縮されています。
ギターのUKロックやゴシックロックの細いトーンに反して、ベースやドラムは存外アグレッシヴであり、硬く締まったドラムはブラストビートも要所要所で飛び出します。
物憂げなクリーンギターにメタリックなリフを絡ませるM-2“Jackie”、速い体感を与えるビートにほの暗いギターが丁寧に寄り添うM-3“Cosmic Overdrive”、しっとりとした美しく激しいギターを掻き鳴らしながらもゆったりしたニューウェイヴに切り替わるM-4“Don't Waste Your Time”、キャッチーなリフとグルーヴが交錯するポジティヴパンクとメタルが衝突するM-5“Give Me To The Night”までに、彼らの個性が濃縮しているのが伺えます。
彼らの軸足はあくまでゴシックロックにあるのかな、とも思いますが耽美なトーンのギターとVoがハードロックに溶けるM-6“Blade & Will”を聴けば、どちらにも受ける魅力があるとわかります。
エピックメタル的な勇壮な演奏に物悲しいメロディーが立ち上ぼるM-7“Dragon,Why Do You Cry?”、キレのあるリフとドラムに悲鳴のようなVoが悲しみを吐露するM-8“Double Negative”にメタルバンドらしさも感じられるのが何とも心憎い。
作中最も繊細でリリカルなギターが炸裂するM-10“A Single Solemn Rose”にまさしくThe Cureを見つける方は多いでしょうし、幕を下ろす憂鬱なメロディーラインが軽やかに走り抜けるM-11“Mana”はBauhausやJoy Divisionをも彷彿とさせます。
一本調子とも言える朗々としたVoにはManila Road辺りを思い出しますが、どことなくSister Of Mercy辺りの暗さを漂わせています。
これはメタルバンドにはなかなかいない、KatatoniaやParadise Lostなどのゴシックメタルとはまた違った、耽美な暗さや物憂げな空気感が全編に張り巡らされています。
ポストメタルの一つの解釈と言えるとも思いますね。
それが故に非常に個性的で、普段メタルを聴かない方にも是非お薦めしたい作品です。


1. Nightfall
2. Jackie
3. Cosmic Overdrive
4. Don't Waste Your Time
5. Give Me To The Night
6. Blade & Will
7. Dragon,Why Do You Cry?
8. Double Negative
9. It'll Be Over Before You Know It
10. A Single Solemn Rose ★
11. Mana
(2019/Eisenwald)
Time/40:09