むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Ether Coven / The Relationship Between the Hammer and the Nail


Ether Coven / The Relationship Between the Hammer and the Nail


アメリカのスラッジ/ポストメタルによる4作目フルレングス。



ストレートエッジのハードコアxBISHOPxの元メンバーPeter Kowalskyを中心に、叙情派ハードコアMorning Againにも在籍経験を持つドラマーJustin Gianoutsosなどで結成した4人組です。
元々はEtherという名前で活動していましたが、Ether Covenに変名してからは2作目となります。
エンジニアとしてLike RatsのAndy Nelson、ミックスには16やIncantation、Nailsといったバンドを手掛けたBrad Boatrightを迎えています。
圧殺感の強いスラッジをベースにしたグルーヴィーな演奏、ハードコアの衝動的な絶叫といった基本骨格に変化はありません。
ですが、より繊細なフレージングやアトモスフィアを強調したパートも目立つ、ポストメタルに移行している印象です。
厳つい濁声なども飛び出し、泥濘を豪快に跳ね除けるような、High on Fireに通じるのは幕開けを飾るM-1“Psalm of Cancer”から一貫しています。
重圧感のあるリフや天上へ昇り詰めるような浮遊感のあるフレージングを織り込み丹念に美と重を織り上げていくM-2“Afraid & Suffering”、転がるようなドラミングに耳障りなギターを配置していく狂ったようなメロディーを聴かせるスラッジーデスメタルへ変化するM-3“God Hates Flags”、一転怒りを爆発させる疾走感と豪快さを聴く者にぶつけてくるM-4“Of Might & Failure”と、非常に重苦しくも衝動的な楽曲が並びます。とは言うものの、かなり綿密に展開を構築しているのがわかる造りになっていますね。
本作のハイライトになるであろう約13分の“The Warmth of Your Bathwater”は、朗々と歌い上げるクリーンVoのバッキングに陰鬱なメロディーを配置し、後半に配置される急転直下のスラッジパートで怒号を飛び交わせるドラマ性の高いか曲です。
悲壮感のあるギターメロディーとハイハット小波で心を浄化させるインストゥルメンタルM-6“Temple of Wu”を経て、優しげなクリーンVoをかなぐり捨てる激烈なスクリームや終末を想起する暗い残響が尾を引くM-7“Consequences of Self (Let the Nails Carve Our Names in Rust)”に至るまで、手抜かりのない絶望感を漂わせる作品です。ちなみにこの曲にはHoward Jonesが参加しているのもポイントです。
前半はスラッジ色が濃く、後半はポストメタル的な印象を与えるのが特徴的ですね。
重々しい素養を最後まで貫く、この手の音楽が好きな人には得難い一枚になっているかと思います。
湿度の高さに反してジメッとした印象を受けないなかなかの逸品です。



1. Psalm of Cancer
2. Afraid & Suffering
3. God Hates Flags
4. Of Might & Failure
5. The Warmth of Your Bathwater ★
6. Temple of Wu
7. Consequences of Self (Let the Nails Carve Our Names in Rust)
(2022/自主制作)
Time/47:46


Score:9.1/10


www.youtube.com