むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Forlorn Citadel / Ashen Dirge Of Kingslain

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Forlorn Citadel / Ashen Dirge Of Kingslain



オーストラリアのアトモスフェリックブラックメタルアクトによる初フルレングス。


Summoning辺りを参照して、シャバシャバの音質ながらファンタジックなメロディーを聴かせるスタイルです。
全ての楽器をSolace氏という人物が手掛けており、彼はMoonlight Drownsというアトモスフェリックブラックメタルバンドでも知られていますが、邪悪で冷たいブラックを展開していた母体とは完全に音楽性が異なります。
あちらもRawでシャバシャバのトレモロを主軸にしていましたが、こちらはメロディーの指向性が幻想のトールキン的な世界観に振りきっています。
牧歌的なキーボードによる旅の幕開けを飾るインストM-1“Glimmering Hearth To Ages Rekindled”に連なる雄大な山々の尾根を練り歩くようなM-2“Forthwith Thine Guildhelm Strong”、漸く辿り着いた荘厳な拵えの古城の中から恐ろしい悪魔に堕ちた偉大だった王の声が響くようなM-3“Ancient Keepers Of Unending Entombment”と、非常にイマジネーションが掻き立てられます。
幽玄としたジリジリとひりつくトレモロが争いの屍の上を舞う寂寞としたM-4“Ashen Dirge Of Kingslain”、騎士が剣先を天に掲げる勇壮な光景が目に浮かぶ幻想的なキーボードも美しいM-6“Blade Pried Whom'st Grasp Unyielding”、旅路を終え新たなる王国の礎となる王が誕生するかのようなM-7“Beholden To Griefborn And Veinroot”の威厳に満ちた終幕に、徹底した美意識があります。
ボーナストラックであるM-8“Conquering the Gate of Kazuth-Dol (demo) ”の簡素な形も、意外と新たな旅人を迎えるかのような聴き心地。
極めてメロディックな作風ながら、音圧も緩急も圧倒的に足りていないので、あまり薦めづらい作品でもあります。
ただ、この類の作品は世界観の雰囲気さえ掴ませれば勝ちな部分もあるので、RPG指輪物語的な空気が好きなら聴いても損はないですよ。



1. Glimmering Hearth To Ages Rekindled
2. Forthwith Thine Guildhelm Strong ★
3. Ancient Keepers Of Unending Entombment
4. Ashen Dirge Of Kingslain
5. Below the Grey Mist, Above the Forgotten
6. Blade Pried Whom'st Grasp Unyielding
7. Beholden to Griefborn and Veinroot
8. Conquering The Gate Of Kazuth-Dol (demo) 
(2020/Northern Silence Production)
Time/41:35