むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

Ages / Uncrown

f:id:bluecelosia:20200919010334j:plain
Ages / Uncrown



スウェーデンのメロディックブラックメタルバンドによる2作目フルレングス。



極めて煽情度の高い冷えきったトレモロをじっくり聴かせる作品で、割と散漫だった前作から大きく飛躍しています。
隙間を大きく取った、広がりのあるアレンジが主軸となり、その反動でメロブラでよく聴かれる類の狂ったように速い曲はほぼないです。
ただ暴虐性を犠牲にしても体得したメロディーの美しさは悪魔に魂を売ったのかと思えるほど壮大であり、悠久の旅路を想像させる起伏に満ちていることは、M-1“Burn Them”を聴けばわかるでしょう。
気が遠くなるほど吸い込まれていくような透明度の高い美しさに邪悪なVoラインが絡みつくM-2“Illcit State”、じっとりとへばりつく重たいベースと凍えるようなしゃがれ声に寄り添う冷たいトレモロが横たわる絶対零度のシンフォニーを聴かせるM-3“Herolds Of Enslavement”、穏やかなストロークを縫うようにトレモロの冷気が大地を冷やす悠然としたM-4“A Hollow Tomb”に至るまでの道程に、寒々しくも雄大な自然の厳しさが伺えるでしょう。
丁寧に爪弾かれるフレーズから一気に邪悪な空気が充満していく闇夜を舞うようなメロディックブラックM-5“Dominionism”、一転鮮やかすぎるフレーズで冷ややかさと華やかなキーボードで軽やかに空中を旅するM-6“Undivine”を経て、星が煌めく透き通った夜空に邪悪な獣が疾走していく風景が浮かぶ勇壮なM-7“Uncrown”に着地するなかなかの展開の緻密さ。
神経を引っ掻くようなトレモロの厭な感触と共に噛みつく絶叫と身体を芯から冷やすメロディーが襲うM-8“The Death Of Kings Of Old”、大いなる旅路の終わりを悲壮的な空気と共に緩やかな疾走と共に幕を下ろすM-9“Pyres”と、2作目にして彼等の目指す地平が明確になりました。
シンフォニックブラックにも近い荘厳さもありますが、あくまでギター主導によるものであり、それを徹底的にやりきっています。
この芳醇すぎるメロディーの美しさに暴虐的な爆走が合わさると稀代の名作になる予感がひしひしと感じる、ちょっと次作を期待してしまう作品ですね。
絶対零度の美しいトレモロをとことん堪能したい方にオススメです。



1. Burn Them
2. Illcit State
3. Herolds Of Enslavement
4. Hollow Tomb ★
5. Dominionism
6. Undivine
7. Uncrown
8. The Death Of Kings Of Old
9. Pyres
(2020/Black Lodge)
Time/42:58