むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Vredehammer / Viperous

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Vredehammer / Viperous


ノルウェーブラックメタルバンドによる3作目フルレングス。


AbbathのライヴサポートやNordjevelにも一瞬在籍したこともあるPer Valla氏を中心としたバンドで、今作からTotengeflüsterのドラマーKai Speidel氏が加入しています。
彼等のスタイルとして、元々The Wretched EndやZyklon辺りの無骨なブラックメタルがありましたが、今作ではそれをブラッシュアップしつつ非常に殺傷力の高く鋭利な方向に突入しています。
更に電子的な要素を大々的に加えており、ダークウェーヴ的な妖しさが注入されて毒々しさが全面に出ているためサイバーパンクを想像させる雰囲気が、掴みとなるM-1Winds Of Dysporia”から張り巡らされています。
けたたましいドラムと突き刺すリフの鋭さで都会のネオン煌めく闇夜を疾走するM-2“Aggressor”、凄まじい足数で容赦なく叩かれるブラストと臓腑を抉るベースが暴虐的なブルータルブラックM-3“Suffocate All Light”、一気呵成の緻密な演奏の隙間から妖しい電子音が立ち上って邪悪な空気が充満するM-4“Viperous”に至るまで、息も吐かせぬ噎せ返るような毒気がどこか官能的。
輪郭のはっきりしたリフで立体的に組み上げられるリズムパターンが面白いテクデス的味わいもあるM-5“Skinwalker”、グッとスラッシュに寄せたようなリフで耳を切り刻みながら厭世感の滲んだプリミティブブラックの雰囲気で酔わせるM-6“In Shadow”、一転テンション高く爆走するウォー/ベスチャルの突貫力を持ちながらも洗練されたM-7“Wounds”の中盤の情け容赦ない殺伐とした邪悪さも素晴らしい。
ぶわついた電子音がトレモロにまとわりつく異様な空気が溢れ出す黒々と疾走するM-8“Any Place But Home”、荘厳な残響が美しいHate辺りの空間演出が匠の業を聴かせつつ全てを焼き尽くす業火のブラックメタルである終幕M-9“From A Spark To A Withering Flame”と練り込まれた作品に仕上がっています。
この手の割と基本に忠実なスタイルに実験的な要素をぶちこんで破綻させずキャッチーに聴かせる、というのはもっと話題にされていいと思いますし、非常に明瞭な録音なので間口は広いと思います。
個性的でなかなか強烈な、アートワークの毒蛇も嵌まっている一枚。



1. Winds Of Dysporia
2. Aggressor
3. Suffocate All Light ★
4. Viperous
5. Skinwalker
6. In Shadow
7. Wounds
8. Any Place But Home
9. From A Spark To A Withering Flame
(2020/Indie Recordings)
Time/42:37