むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Marrasmieli / Between Land And Sky

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Marrasmieli / Between Land And Sky


フィンランドブラックメタルバンドによる初フルレングス。



雄大な自然への畏怖や敬意、憧憬を表題やアートワークから伺い知れる今作。
USカスカディアンブラック勢からの影響も感じ取れますが、彼等の音はフィンランドらしい生々しく荒々しいメロディックブラックであり、Moonsorrow直系のペイガンブラックと言ってもいいです。
荒々しいと言っても、M-2“Embrace The Eternal”を聴けばわかる通り、寸分の狂いのないブラストビートや鋭く刻まれるギターリフから成る暴虐的なものではなく、豊潤でクサめのメロを思い切り掻き鳴らすタイプ。
邪悪なギターとドラムの乱打で突っ走るM-3“Those Who Are Long Gone”であってもどこか憎めない人懐っこさのあるメロディアスなパートを織り込み起伏を産み、神秘的なキーボードが深遠な世界へ誘うM-4“Karakorum”の原始的なドラムとベースでメロディーの基礎を作り上げる手腕はなかなかに洗練さを感じさせるブラックメタルに仕上がっています。
勇壮なギターでヴァイキングの悲壮を演出するようなM-5“The Ardent Passage”では昔のMoonsorrowに接近するような世界観を繰り広げたかと思えばHornaのような爆走に雪崩れ込みます。
ASMR的な波音に派手めなギターメロディーをぶちこみドラマティックな雰囲気で聴かせるM-6“Aallot”の幽玄たる美しさは特に素晴らしく、11分近くある長さを感じさせない大曲に仕上がっています。
後半に差し掛かるとうっすらとキーボードを被せながら爆走する様が涙腺緩む出来で大変美味。
ブラックメタルにしては明瞭な録音ですが、RawでUGな空気感は存分にあり、愛好家にはまず外さない作品です。
まだまだ独自性に富んだとは言えず、Moonsorrowファロワー的な佇まいは微笑ましいですが、初作でこの完成度なのでこれからが楽しみになる一枚です。


1. The Unbroken Blue
2. Embrace The Eternal
3. Those Who Are Long Gone
4. Karakorum
5. The Ardent passage
6. Aallot ★
(2020/Naturmacht Productions)
Time/45:30