むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Earth Rot / Black Tides Of Obscurity

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Earth Rot / Black Tides Of Obscurity


オーストラリアのブラッケンドデスメタルバンドによる3作目フルレングス。


スウェーデンデスメタルのようなガリガリとざらついたギターと冷涼なブラックメタル由来のメロディーを併せ持った作風はますます磨かれてきました。
汚泥のような独特の感触はより強まり、時にドゥームあるいはスラッジを想起させる粘っこいグルーヴは特徴的ですが、彼らの軸足はあくまでブラックメタルデスメタルの折衷にあります。
開幕を飾るM-1“Dread Rebirth”に吹き荒れる冷たく邪悪なリフが象徴しており、発狂するかのような絶叫と共に悲壮感のある厭世的なメロディーが北欧のプリミティブブラックに接近した印象を受けるM-2“New Horns”で確固としたものになっています。
ざらざらしたギターで威圧感のある刻みの下ブラストが踏み鳴らされるM-3“Towards A Godless Shrine”、古城に迷い込んだような妖しく美しいメロディーが死臭と共に吹き荒れるM-4“Unparalleled Gateways To Higher Obliteration”、軽やかな疾走で歪んだギターを叩きつける煽動的なVoも堂に入ったM-5“Ancestral Vengeance”に至るまで息も吐かせぬ暴虐を発揮しています。
邪悪なメロディーを聴かせる少し原初のメロデスに寄せた硬派な展開から軽やかなAerosmithを彷彿とさせる明るいパートを挟むM-6“The Cape Of Storms”、獰猛な咆哮とスラッシーに刻まれるリフが爆走するM-7“Serpent's Ocean”、苦悶と憤怒の絶叫を上げながら徐々に加速するデスロールの小気味良さと重さが癖になるM-8“Mind Killer”、一段とキレ味を増したリフがガリガリと耳朶を引っ掻く禍々しいオーラをぶちまけるM-9“Unravelling Vapour Of Sanity”の熱を冷ややかでブルージーなギターと儀式的な語りで〆るM-10“Out In The Cold”とテンションを落とさないまま突っ走る完成度の高さたるや。
国は違えど、スウェディッシュデスメタルの理想形に近い作品に仕上がっており、聴けば聴くほど唸る仕上がりです。
冷え切った叙情性を保ったまま、滾った熱も封じ込める熟達さはデスメタル愛好者の方々になかなか刺さるのでは。


1. Dread Rebirth
2. New Horns
3. Towards A Godless Shrine
4. Unparalleled Gateways To Higher Obliteration
5. Ancestral Vengeance
6. The Cape Of Storms ★
7. Serpent's Ocean
8. Mind Killer
9. Uravelling Vapour Of Sanity
10. Out In The Cold
(2020/Season of Mist)
Time/45:22