むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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HMLTD / West Of Eden

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HMLTD / West Of Eden


UKのアートパンク/ロックバンドによる初フルレングス。


英国ロックの詩情を残しつつ猥雑な空気を放射するバンドで、近年には稀少な空気感を持った彼ら。
初フルレングスということでバンドの全容を明らかにしていく中でより意味不明な戯曲性やDavid Bowieへの憧れを表出したキャラクター臭さを浮き彫りにしています。
西部劇なのに“Calamity Jane”ではなく“Calamity James”を採用する辺り、バンドの頭脳でもあるフロントマンHenry Spychalskiの悪戯好きな一面がうかがい知れるよう。
ぶっ壊れたエレクトロパンクであるM-1“The West Is Dead”から連なる初期のKasabianにも通じるスタジアム映えしそうなフロアアンセム級のファンクをぶちかますM-2“Loaded”の根底に脈打つ太いベースラインを聴けば、今作の軸がいかに多様化しようがそのグルーヴに集約されるのが分かると思います。
それはマカロニウェスタンの雰囲気を持つメロディーが魅力的なM-4“To The Door”や一転して芝居染みた歌い回しと展開でドリーミーな戯曲を繰り広げるM-5“Satan,Luella & I”、ミラーボールのように煌めくシンセが華やかに舞うポップM-6“Mikey's Song”の時点で確信できるのではないでしょうか。
雑多な要素を取り込む貪欲さはボーカロイドを採用して日本語で歌わせるM-7“Why?”や低音で抑え気味にAlt-R&Bやインダストリアルとブリストルを結びつかせるM-8“149”、若干ニューメタルにも連なりかねない重低音で狂ったようにしゃくり上げVoで歌い上げるM-11“Death Drive”でも伺えます。
木訥なメロディーを教会音楽のように演出して様々に加工したコーラスを這わせるM-12“Nobody Stays In Love”、朗々とした歌唱の裏でうっすらと流れるメロディーが幕を下ろす祝祭の終わりのようなM-15“War Is Looming”に至るまで、かなり情報量が多い雑然としたものなのに不思議と統一感がある作品です。
彼らにはこの繁華街のような猥雑な若さを消さずに邁進して欲しいなと思えますね。
このまま大きく育てば、それこそKasabianに近い存在になれそうなハッタリは効いていますよ。
ちなみにHMLTDとは、“Happy Meal Ltd”の略だったり“Hate Music Last Time Delete”の略だったりするようですね。


1. The West Is Dead
2. Loaded ★
3. The Ballad Of Calamity James
4. To The Door
5. Satan,Luella & I
6. Mikey's Song
7. Why?
8. 149
9. Joanna
10. Where's Joanna?
11. Death Drive
12. Nobody Stays In Love
13. MMXX A.D.
14. Blank Slate
15. War Is Looming
(2020/Lucky Number Music,Tugboat
Time/49:17

Score:8.8/10


HMLTD - LOADED