むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Sasami / Sasami

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Sasami / Sasami


USのシンガー/ソングライターによる初フルレングス。


日本人には美味しそうな響きの名の彼女の奏でる音楽は、非常に冷ややかです。
極めて内省的かつ美しいメロディーラインを主軸に据え、それらをシューゲイザーやポストパンク等で演出する。
今作の基盤はあくまでアコースティックアルバムでも通用するギターメロディーの美しさであることは、M-1“I Was A Window”が証明しています。
ゆったりと表情を変えつつも物憂げなトーンを崩さない姿勢は、ドラムが軽やかに跳ねるネオアコ風味のM-2“Not The Time”でも変わりません。
ストパンクから吸い上げた緊張感のあるリズムに丁寧にギターを這わせるM-3“Morning Comes”、Devendra Banhartとの甘いデュエットも楽しめるフリーフォークに寄せた弾き語りM-4“Free”、緩やかなテンポと冷めた歌で幽玄な空気渦巻くM-5“Pacify My Heart”のSonic Youthへの接近には嬉しくなりました。
軽やかなエレクトロビートに溶けいるようなVoが乗ってふくよかに曲が彩られていくM-7“Jealousy”、冷たく響くギターに聖歌のようにキーボードが寄り添い神聖な空気を作り出すM-9“Adult Contemporary”、乾いたエレクトロビートに冷ややかなエレクトロが疾走しサイケデリックな鳴りを持つM-10“Turned Out I Was Everyone”の幕引きまで非常に緻密に織り上げられた構成に舌を巻くはず。
派手さはなく、地味と言ってもいいのですが、ひんやりしたこの音世界は実に居心地の良いものですね。
MitsukiやSnail Mailが好きな人には刺さると思います。


1. I Was A Window
2. Not The Time
3. Morning Comes
4. Free
5. Pacify My Heart ★
6. At Hollywood
7. Jealousy
8. Callous
9. Adult Contemporary
10. Turned Out I Was Everyone
(2019/Domino)
Time/40:08