むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Gorgon / Elegy

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Gorgon / Elegy


フランスのシンフォニックデス/メロディックデスメタルバンドによる2作目フルレングス。


大化けしたと断言します。
デビュー作でもある前作“Titanomachy”は悪くない作品であるものの、決め手と個性に欠けた印象でしたが、今作“Elegy”は一体何があったのかと言いたくなるほど別物です。
基盤は変わっていません。暴虐的なメロデスに壮麗なオーケストラを流し込み、噛みつくようなグロウルで場を支配する。
ただ、その質と密度が全く違いますね。
前作発表後に正式メンバーとしてCharles Philyなる人物がドラムとして加入しており、確固たる推進力を手に入れたことも関係しているのでしょうが、そもそもM-1“Origins”を聴けばわかるように、曲を華やかに彩るオーケストラの質が格段に上がっています。
まるでその場に交響楽団を従えたかのようなド派手なストリングスを交えたメロデスの物悲しいメロディーを全編に押し出した作風はなるほど“Elegy”だな、と。
どこか東洋的な響きを伴うストリングスとコーラスに邪悪で冷たいギターを這わせたM-2“Under A Bleeding Moon”、さらに苛烈さを増した暴虐的なリフとブラストビートで緩急自在に行き交う映画音楽のようなM-3“Nemesis”、禍々しいリフで暗黒空間を作り出すおぞましくも美しいシンフォニックデスM-4“The Plagues”で一つの節を作り出しています。
空気がグッと華やかさを増すのは、必殺のメロディーラインで迫る作中最も複雑な展開を持つM-5“Into The Abyss”から怒涛のブラストビートとキャッチーなリフの隙間をオーケストラが高らかに響くM-6“Ishassara”という中東系メロディーを押し出した中盤です。
一層物悲しさを増したシタールのような音色がゆったりと複雑な展開の演奏にまとわりつくM-7“Of Divinity And Flesh”、祈るような女性コーラスとアンビエントな音空間が溶けるようなインストM-8“Elegy”で幕を下ろす構成も見事。
非常にコンパクトな作風で、もう少し聴きたい感覚もありますが、非常に質の高い壮麗な作品なのでこの手のデスメタルが好きな方には是非オススメしたい逸品です。
今後この作風を磨いていけば、フィルムスコアメタルの一翼として広く認知される可能性もありますね。


1. Origins
2. Under A Bleeding Moon ★
3. Nemesis
4. The Plagues
5. Into The Abyss
6. Ishassara
7. Of Divinity And Flesh
8. Elegy
(2019/Dusktone)
Time/43:04