むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Billie Eilish / When We All Fall Asleep,Where Do We Go?

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Billie Eilish / When We All Fall Asleep,Where Do We Go?


USのシンガー/ソングライターによる初フルレングス。


巷で話題の彼女、人気の出方に少し懐疑的な印象を持っていましたが、今作を聴いて認識を改めました。
物凄い熱量がこもった作品です。
音楽性で言えば、少し前のFKA TwigsやArca周辺とも共振しそうですが、もっと直接的にポップソングとしてしっかり機能しています。
彼女の音楽トラックには兄のFinneas O'Connellが多大に噛んでいるので、実質的に兄妹ユニットなのかも知れません。
ですが、アタックの効いたサブベースを全面に這わせたM-2“Bad Guy”を軽やかに乗りこなす様は17という年齢を鑑みると恐ろしいほどの才能を感じさせますし、兄もまだ20そこそこ。
ベースと消え入るようなビートを背景に歌い上げるM-3“Xanny”のインダストリアル的意匠、トラップとノイズを正面衝突させたような暗黒ビートがクールなM-4“You Should See Me In A Crown”、音数少なめなバックトラックに不穏で物憂げなメロディーと歌が乗るM-10“Bury A Friend”など、彼女の曲はおおよそ一般受けするとは言い難い癖があります。
ですが、歌やメロディーと合わさると異様にキャッチーで、非常に中毒性があります。
ポップスとして微かな跳ね感を漂わせるM-5“All The Good Girls Go To Hell”、神聖さを漂わせるハミングを背景に伸びやかに歌われる荘厳な雰囲気が終始絡みつくM-7“When The Party's Over”、どこかMTVやアメリカンアイドルのような空気感に彼女の毒気を忍ばせたM-9“My Strange Addiction”、穏やかなピアノとサイレン混じりの風の音が映画の終わりに感じられる美しいM-12“Listen Before I Go”といった曲で見せるあらゆる世代を取り込めるポテンシャルの高さに脱帽。
思春期特有の思いの丈を吐き出し、ゆっくり沈んでいくような音像が凄まじい生々しさと迫力で襲ってくるような作品です。
音楽的には攻撃的な作品ではないですが、要所要所に仕込まれた刃物のような鋭利な音処理には、聴き手を捩じ伏せる力強さがあります。
今作の音を聞き漏らさまいとするなら、イヤホンやヘッドホンが必須だと思います。
ある程度年を重ねると彼女のメッセージには共感よりは郷愁を覚えるでしょうが、確かに同世代には深々と刺さるでしょう。
それこそ、NirvanaRadioheadといったロックバンドと同じように。
彼女の名前の頭文字は“BE”、何にでもなれるポテンシャルがあります。


1. !!!!!!!
2. Bad Guy
3. Xanny
4. You Should See Me In A Crown
5. All The Good Girls Go To Hell
6. Wish You Were Gay
7. When The Party's Over
8. 8
9. My Strange Addiction
10. Bury A Friend
11. Ilomilo
12. Listen Before I Go ★
13. I Loved You
14. Goodbye
15. Come Out And Play
16. When I Was Older
(2019/Darkroom/Interscope)
Time/50:48
※M-15,16日本盤ボーナストラック

Score:9.0/10


Billie Eilish - bad guy