むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Astronoid / Astronoid

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Astronoid / Astronoid


USのポストメタル/ブラックゲイズ/オルタナティブロックバンドによる2作目フルレングス。



これは化けました。
ブラックメタル由来のトレモロが紡ぐのは陽光降り注ぐ哀愁あるも陽性のメロディーです。
そういうわけで、Deafheavenの“Sunbather”以降のブラックゲイズのスタイルを取り入れた路線はますます磨き抜かれており、少しウィスパーがかったクリーンVoは完全にシューゲイザーのそれ。
DeafheavenよりもAlcestに近く、そこにメロパワみたいなギターソロをぶっこんできたりと、彼らを指してAlcest+Dragonforceと評する向きもあるようです。
確かに、柔らかなメロディーを丁寧に重ねて爆走するブラストと流麗なソロが拝めるM-1“A New Color”や、さらにブラストをやりすぎなくらい炸裂させながら美メロを乱反射させるM-2“I,Dream In Line”の畳み掛けはその傾向が強いです。
ゆったりと歌い上げつつも自然にテンポアップする心地好さが癖になるM-3“Lost”、USオルタナティブ/エモの感性を全面に押し出し宇宙空間のような残響を響かせるM-5“Breathe”の、どのシーンにも属せそうであるからこそカテゴライズしにくくなっている音の作り込みは素晴らしいですね。
柔らかな音処理とヘヴィな聴き心地が美しさを浮き彫りにするM-6“Water”、Djent/ポストメタルの轟音とブラックメタルのブラストで甘くも凶暴な音を生み出すM-7“I Wish I Was There While The Sun Set”、高らかに鳴り響くメタリックなギターの音色と振り絞るようなハイトーンが印象的なブラスト踏みっぱなしのブルータルなM-9“Ideal World”で〆る構成もなかなかいいです。
今作、単純に曲が佳くて力押し感もあるのに技で聴かせているような感触もあるのが気に入りました。
骨格である演奏はどこからどう聴いてもメタルなのに、プロダクションと歌の影響でオルタナティブロックを聴いているような聴き心地にさせてくれるユニークな作品です。
AlcestやDeafheaven、Tesseract近辺の遺伝子は感じられますが差別化ができつつあるので、もっと大きく育ってほしいですね。


1. A New Color
2. I,Dream In Line
3. Lost
4. Fault
5. Breathe ★
6. Water
7. I Wish I Was There While The Sun Set
8. Beyond The Scape
9. Ideal World
(2019/Blood Music)
Time/47:34