むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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The Fever 333 / Strength In Numb333rs

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The Fever 333 /Strength In Numb333rs


USのラウドロック/ハードコアバンドによる初フルレングス。


Linkin Parkを彷彿とさせる立体的でモダンな音像と、Rage Against The Machineのように強い主義主張と姿勢を持ったバンドです。
確固たるファンベースを築いていたletliveの解散後、そのフロントマンJason Aaron Butlerが選んだ戦場はよりポリティカルなもの。
バンドのトレードマークにブラックパンサーを起用したりバンド名にある333の由来でもあるCommunity(地域)、Charity(慈善)、Change(変化)というスローガンであったり、彼らのスタンスは一貫して政治的。
その音は非常に情報過多で端的にカテゴライズするのが難しいです。
ラウドロック/ニューメタルから吸い上げた重たく不穏なギター、出自でもあるハードコアのケツを叩くような焦燥感溢れる体感速度に加えて90年代ヒップホップのマナーに沿ったようなトラックとラップの構築に現代のトラップといった先端のものも貪欲に取り込み提示してみせる優れた嗅覚と柔軟な姿勢。
それでいてしっかり自分たちのフィルターを通した上で異様なまでにキャッチーであることを、実質オープナーであるM-2“Burn It”が象徴しています。
重心の低いリズムとグルーヴに合わせて広がるようなメロディーとキレッキレのラップが縦横無尽に駆け回るM-3“Animal”、歯切れのいいソリッドなリズムから一気にポップなコーラスに雪崩れ込むM-4“Prey For Me/3”、押さえつけるようなギターに反してダンサブルなドラムが楽しいポップなM-5“One Of Us”、物悲しいメロディーと唾棄するようなラップが一転シルキーなコーラスが美しいM-6“Inglewood/3”の流れるような構成がどんどん溢れるように展開していきます。
エモいクリーンVoが憂いを帯びてストリングスと共に溶けていくようなM-9“Am I Here?”や表題通りイノセントな響きのピアノがラウドなヒップホップの狂騒に呑まれていくM-7“The Innocent”といった曲は彼らの戦場がどこにでもあることを示唆しているよう。
スカスカなトラップビートに合わせて噛みつくようなラップやどんどんアグレッションが強まるエレクトロビートが心地好い7分の狂気M-8“Out Of Control/3”は彼らの真骨頂なのかなと。
こういったざらついて狂暴な音を出すバンドはメジャーなフィールドには貴重ですね。
ちなみに“/3”のつく曲は今作においても重要な曲だと思います。
開放的なコーラスが心地好いM-10“Coup D'Etalk”の広がるようなVoは故Chester Benningtonを思い出してグッと来る人も多いのでは。
ライヴでの常軌を逸したパフォーマンスも話題になってるようですが、作品に懸けている熱も非常に感じられる素晴らしい作品です。
居ても立ってもいられない衝動と完成度の高さがパッケージングされた感動的なアルバムですね。


1. …
2. Burn It
3. Animal
4. Prey For Me/3
5. One Of Us
6. Inglewood/3
7. The Innocent ★
8. Out Of Control/3
9. Am I Here?
10. Coup D'Etalk
11. Trigger
12. Vandal
(2019/Roadrunner)
Time/46:56
※M-11、12日本盤ボーナストラック