むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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epic45 / Through Broken Summer

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epic45 / Through Broken Summer


UKのオルタナティブ/ポストロック/シューゲイザー/エレクトロニカバンドによる10作目フルレングス。


久々の新譜はいつにも増して郷愁を誘う作風です。
近年のインディーロック的なダイナミックなロック然とした要素は要所要所で顔を出しますが、これは音楽的なスパイスというよりはメンバーであるRob GloverあるいはBen Holtenのルーツを素直に表出させたようなものだと解釈できます。
何しろ根底にあるのが“僕たちが生まれてから20代前半にかけて成長した場所に戻ってきた”、まさしく郷愁。
なので使われるノイズや電子処理がBoards of Canada的でもあるM-2“The Lanes Don't Change”やそれを発展させたエレクトロニカ×ニューウェイヴとも言えるM-3“Outside”を聴けば、今作の立ち位置が伺い知れます。
これまでのような全てが混在した音というよりは、曲によっての輪郭がはっきりしているのもそのコンセプトによるものと言えるかも知れません。
青春時代の1ページを思い出させるような、写真集のようなセピアのイメージ。
清廉なギターが華やかに広がるM-4“Sun Memory”の陽だまり感、くっきりしたドラムビートに蕩けるようなギターが波音を生み出す穏やかなM-6“Hillside '86”、躍動感あるギターと叙情的なアルペジオの対比が美しいM-9“Cloud Phantom”といった曲が放つ強烈な80'sの残響はまさしく郷愁的。
変わらない安定感はそのままに、どこか軽やかな雰囲気が強く漂った作風なので、入門にも適しているかも。
ポップマナーに沿ったソングライティングがそういった意識をより強く感じさせるからかも知れませんが。
とは言え、大きな驚きが待っている類の作品ではありません。
昔からあるもの、また変わってしまったものに思いを馳せて、ホッと一息つける、心が洗われるような一枚ですね。
日常の喧騒から遠のいて、ふと自分の歩いてきた道を振り返りたくなる時のBGMに近い作品です。


1. Remember The Future
2. The Lanes Don't Change
3. Outside
4. Sun Memory
5. Cornfields And Classrooms
6. Hillside'86
7. New Silence
8. From Quite Houses
9. Cloud Phantom ★
10. Other Rooms
11. Life Fades Whilst It's Still Yours
12. Harvest Echo
13. Through Broken Summer
14. We Don't Live Here Anymore
(2018/Wayside & Woodland)
Time/53:54