むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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ヤなことそっとミュート / MIRRORS

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ヤなことそっとミュート / MIRRORS


日本のアイドルグループによる2作目フルレングス。


“ヤなことだらけの日常をそっとミュートしても何も解決しないんだけど、とりあえずロックサウンドに切ないメロディーを乗せて歌ってみる事にする”という彼女たちのコンセプト。
これは、この手の音楽性をズバリ言い当てたもの。
閉塞した日常からの逃避や反発からくるグランジシューゲイザーなどのオルタナティブロックと、同じく現実からの逃避を具現化したアイドルポップス。
この両者を合わせるという、ありそうでなかった組み合わせをがっぷり真正面からやっているのがこのグループ。
前作は御披露目感がまだまだあって、良くも悪くも噛み合い切れていない部分がありました。その拙さも受けた理由ではあると思いますが。
そしてこの新作ですが、尖ったギターの高まりと青い歌メロが爽快感たっぷりに駆け抜けるM-1ルーブルの空”を聴けばわかりますが、何故かバンド感が増しています。
コンポーザー率いる演奏チームと、アイドルグループ“ヤなことそっとミュート”の一体感が凄く、バンド“ヤなことそっとミュート”になっています。
90年代エモの青さに凛とした歌が絶妙に合ったM-2“クローサー”、マスロック的ダイナミズムにリヴァーヴのかけたメロの歌声の浮遊感とキャッチーなコーラスが癖になるM-3“GHOST WORLD”、美しいアルペジオと儚く疾走するコーラスの対比が素晴らしく胸を撃つM-4“HOLY GRAiL”までの序盤を聴いて、あなたは「このバンドいいな」って思うでしょう。
例えば、キャッチーな青春エモロックとしても聴けるM-7“Any”や冷たさから温もりを感じさせるギターメロディーと穏やかかつ可憐な歌声で一段階上に上がった感があるM-10“Palette”では歌と演奏が巧くグルーヴを作っていて、アイドルグループでこういった感覚になる曲を聴いたことがないです。
Taking Back SundayMotion City Soundtrackを彷彿とさせる溌剌とした歌がエモいM-8“天気雨と世界のパラード”、重心の低いラウドロックというかポストグランジな音作りにスピード感のあるアイドルポップスが見事に合致したM-6“Reflection”の音楽的冒険がガチャガチャした暴走モダンヘヴィネスM-11“Phantom calling”に結実して幕を引く潔さ。
何よりこれだけ汗臭い演奏をやっているのに、それっぽさを一切感じさせない漂白された感覚に陥るのがこのグループの大きな魅力。
おそらくコンポーザーの狙いの“色のない感覚”、それが素晴らしいですね。
清純とはまた少し違っていて、どことなく彼女たちの音からは狂気的な危うさを孕んでいるように感じて、そこが好きなんです。
ただ、ライトなファンからすると誰がどこを歌っているのかブックレットでわかるようにしてくれたら嬉しかったです。
アイドルの中でも、全員凛とした歌唱を貫いているので、キャピキャピしている感じのアイドルが苦手な人も是非どうぞ。


1. ルーブルの空
2. クローサー
3. GHOST WORLD ★
4. HOLY GRAiL
5. No Regret
6. Reflection
7. Any
8. 天気雨と世界のパラード
9. AWAKE
10. Palette
11. Phantom calling
(2018/DCG)
Time/39:45