むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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The Crown / Cobra Speed Venom

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The Crown / Cobra Speed Venom


スウェーデンのメロディックデスラッシュ/デスロールバンドによる10作目フルレングス。


ドラム不在の中で作られた前作は賛否大きくありましたが、私は結構好きなアルバムでした。
ただ、専任ではなく、Marko Tervonenが兼任する形で、不安定なドラミングが不満ではありました。
今作はImplodeというメロデスバンドのHenrik Axelssonという人物が加入しました。
彼のドラムは豪快でかつ精緻な、The Crownの音楽性にも合致したパワフルなものです。
前作では作業を分散させていただろうギターも今作では往年の冴えを取り戻しており、前作のハードコア臭さを残したまま、叙情的なフレーズも増強しています。
基本は爆走に次ぐ爆走の暴虐的なデスラッシュですが、翳りを帯びた叙情的なギターの影響で、より劇的に曲を演出しているんですね。
それは重苦しく邪悪で美しいイントロを叩き潰しながら爆走するM-1“Destroyed By Madness”から明らかで、名作“Deathrace King”を手掛けたFrederik Nordstormを起用したことからも気合の入れようが違いますね。
威圧感たっぷりのメロディーとリフ押しのキャッチーなデスラッシュM-2“Iron Crown”、ドラムの過剰なストップゴーから乗りのいいロックンロールのグルーヴに雪崩れるデスロールM-3“In The Name Of Death”で先駆者健在を示す序盤だけでもうニヤニヤする人は多そう。
重厚なスラッシュビートが心地好いミドル/ヘヴィなM-4“We Average!”やマーチングのリズムが取り入れられた行進曲のようなM-6“World War Machine”、暗い荒野もしくは雪原を思わせる叙情的なインストM-9“Where My Grave Shall Stand”から繋がる7分の長尺に持てるものを注ぎ込んだ様々な展開が聴けるM-10“The Sign Of Scythe”といった曲は作品の攻撃性を殺がず多彩さを雄弁に語っています。
Venomにも通ずる馬鹿馬鹿しいほどのコールが気持ち良さそうな表題曲M-5“Cobra Speed Venom”の突っ走り方やツインリードが分厚くユニゾンしてザクザクと突き抜けるM-8“Rise In Blood”は爽快ですし、日本盤ボーナスのM-11“Nemesis Diamond”やM-13“Ride The Fire”もキャッチーに爆走するデスラッシュなので、日本盤の方がオススメですね。
さすがに全てを蹴散らすような“Deathrace King”のような若さ溢れる破壊力こそないですが、老獪さのあるベテランらしい暴虐性と叙情の交錯は抗いがたいものがありますね。
熟達さを感じさせる作品で、個人的には“Deathrace King”よりも好きです。


1. Destroyed By Madness
2. Iron Crown
3. In The Name Of Death
4. We Average!
5. Cobra Speed Venom ★
6. World War Machine
7. Necrohammer
8. Rise In Blood
9. Where My Grave Shall Stand
10. Sign Of Scythe
11. Nemesis Diamond
12. The Great Dying
13. Ride The Fire
(2018/Metal Blade)
Time/60:45