むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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polly / Clean Clean Clean

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polly / Clean Clean Clean


日本のオルタナティヴロックバンドによる初フルレングス。



素晴らしい作品です。
彼らの名前は知っていましたが、今時のバンドだなとスルーしていたくらいで、今作を聴いて驚きました。
ここにあるのは、切り刻まれるほどの痛みを孕んだ絶望的に浮世離れしたメロディーの美しさです。
確かに今作を語る上でシューゲイザーやドリームポップ、ニューウェイヴを取り上げるのは極めて正しいです。
ただ、それらの要素で彼らが何を描きたかったかというのは、時に“死んだ眼をしている”と言われるフロントマン越雲龍馬の心象風景を暴くような、澄みきって冷たく薄暗く甘いメロディーなのだと思います。
正直、この音を聴けば、彼の歌う言葉はそれこそ記号のようなもので、甘い轟音が揺らめくM-1“生活”からして、言葉を掻き消すほど声がノイズと絡まり合っているんですよね。
彼らに対してマイブラの名前は上がるのですが、マイブラよりはA Place To Bury Strangersを彷彿とさせ、特に大胆な変貌を遂げたM-9“狂おしい”や暴力的なギターノイズを叩きつけるようなM-11“バースデイ”の音の方向性がもれにそれなんですよね。
ただ作品全体は、軽快に疾走するノイズに乗せて気だるげに歌うM-2“花束”、グラマラスなシンセに導かれる控え目なディスコハウスを取り入れたM-3“美しい”、爽やかなギターポップを暴力的なノイズで塗り潰すM-4“不在”、伸びやかな声が宙にほどけるような彼らのアンセムであろうM-7“哀余る”、Pacific UV“Static Waves”に接近したかのようなロマンティックな雰囲気が甘く退廃的なM-10“東京”のように非常に曖昧に溶けていくようなもの。
この世界観は出そうと思っても出せないもので、越雲龍馬という人の情熱や執念が透けて見えるんですよね。
ここに辿り着くまでにかなり勉強したようで、昨今そこまで理論づけて音を作るバンドマンも珍しいですよね。
ただ、彼は決して足元を見ながらこの音を出しているわけではないと思います。
後ろ向きなんでしょうけど、仄かな明るさを感じさせる壮大なM-12“717”が祝砲のようにも聴こえたりもするわけで、今後彼の世界観がどう広がるのか興味は尽きないですね。
タイトルの“Clean Clean Clean”は、自分の鳴らしたい音が明瞭になったのかな、と。


1. 生活
2. 花束
3. 美しい
4. 不在
5. Wednesday
6. 刹那
7. 哀余る ★
8. 知らない
9. 狂おしい
10. 東京
11. バースデイ
12. 717
(2018/Daizawa/UK Project
Time/53:39

Score:9.6/10


polly - 生活(MV)