むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Swarrrm / こわれはじめる

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Swarrrm / こわれはじめる


日本のグラインドコアバンドによる5作目フルレングス。


Napalm Deathは世界平和を願ったが、本邦のSwarrrmは愛を歌う。
グラインドコアというジャンルのダイハードなファンにしてみれば、特に今作は邪道に映るかもしれません。
グラインドコアとして爆走に次ぐ爆走一辺倒な作品ではありませんし、カオティックハードコアやブラックメタル、歌謡曲を咀嚼して吐き出したような雑多な側面も目立つ作品ですから。
ですが、今作はグラインドコアの未来を提示した作品であるように思います。
メンバー自身にはそういった思いはないと思いますけど、この作品に籠った熱量はそう感じさせるに足ります。
それは光を感じさせるメロディーがギラつくM-1“ここは悩む場所じゃない”から象徴的で、そこから急転直下のヘヴィネスとこびりつくリフによるキャッチーな爆走を執拗にスイッチさせるM-2“遠く はかなく”、今作の核となっているだろう獣染みた咆哮と苛烈な演奏で愛を乞うスラッジっぽくすらあるM-3“愛のうた”の冒頭だけ聴いても、異様な圧に気圧されるほど。
まさに音の塊とすら形容できないM-4“首輪しゃぶってな”に漂う気だるいメロディーは妖艶ですらあります。
ブラックメタルのメロディーだけを取り出しカオティックハードコアに織り交ぜた凄まじい重圧にのたうちまわるM-5“明日に歌え”を皮切りに、爆走と残響が乱反射して凄まじい混沌を産むM-6“影”、ロックンロール的なリズム感と艶かしいリフがやたらキャッチーなM-7“夢から”、ヒステリックなノイズが天に昇り慟哭の豪雨を叩きつけるM-8“マーチ”の中盤の壮絶さ。
脳を蝕むノイズを引き金に哀愁のメロディーをドラマティックかつ激情的に聴かせるM-9“血が叫ぶ”、気持ちよすぎるベースからどんどん楽曲が崩壊していく様に息を呑むM-10“瞬き”、崩落していく激情を抱えてぶちまけるようなブラストが得も知れぬ感情を覚えるM-11“自由”、さらに苛烈さを増したブラストビートに乗せて「この手を離さないで」と叫び続けるM-12“絆”で走り続けた世界観は壮絶極まりないリフとブラストと咆哮の混沌に渦巻くM-13“あなたにだかれ こわれはじめる”で極点に達して幕を下ろします。
最後まで聴くと途方もなく精神を削り取られる重たい作品ですが、これは是が非でも聴くべきです。
前作の“あがれ”や“幸あれ”に感動した人には、あれが13曲分煮詰めて純化させた作品だと言えば早いかもしれません。
前作が進化の極致かと思っていたら、こちらの想像の埒外の大傑作でした。
この作品は、仮にノイズとブラストの“汚し”を取っ払ってアコギと咆哮だけにしてもグラインドコアにしてしまえると容易に想像できる凄味もありますね。


1. ここは悩む場所じゃない
2. 遠く はかなく
3. 愛のうた
4. 首輪しゃぶってな
5. 明日に歌え
6. 影 ★
7. 夢から
8. マーチ
9. 血が叫ぶ
10. 瞬き
11. 自由
12. 絆
13. あなたにだかれ こわれはじめる
(2018/3LA)
Time/42:00