むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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凛として時雨 / #5

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凛として時雨 / #5


日本のオルタナティヴロック/カオティックハードコアバンドによる6作目フルレングス。


久しぶりの新譜ですが、復活感はあまりありません。
それはTK氏(G,Vo)のソロや345氏(Ba,Vo)のGeek Sleep Sheepなど課外活動も活発であったこと以上に、このバンドの音が確固たるものになっていることの証左だと思います。
ゴリゴリと耳を削り取りながらうねりまくるベースラインと奔放かつ豪放に叩かれるドラム、つんざき突き刺すようなギターが鳴らされるだけで、凛として時雨になるわけですよね。
今作は前作“I'mperfect”で拓けた繊細かつ成熟したポップネスを順当に更新した作風かと思いきや、矢継ぎ早に曲が展開していき後半にいけばいくほど混沌とヘヴィネスが渦巻いていく作品になっています。
そのため、得意とする高速ディスコ的なM-1“Ultra Overcollection”から叙情的に崩壊していく最終曲M-10“#5”に至るまで、最初はわけがわからないままに終わっていった印象でした。
合間合間に挟まれるキャッチーなM-2“Chocolate Passion”やM-8“DIE meets HARD”といったわかりやすい曲がよりアルバムの異物感を増している面白い構成になっていると思います。
全体的に見ればポップかつ慟哭にギターが咽び泣くようなM-3“Tornado Minority”や四つ打ちで踊らせながら浮遊感をまとわりつかせるM-4“Who's WhoFO”、冷えきったギターがうねるベースラインと共に天へと渦巻いて昇っていく壮大なM-6“ten to ten”のように、メロディアスな曲が目立つんです。
それでも、決して“わかりやすい”作品ではないのが非常に面白く、個人的には彼らの作品で最も“重たい”アルバムだな、という印象を受けました。
タイトルから1stの“#4”の続編的な誘導をされる人が一杯いると思いますが、決して似た作品ではありません。
ですが、彼らの叙情的な側面がより一層強調された成熟度を感じさせる、いいアルバムだと思います。
聴き込めばもっと良くなりそうですね。


1. Ultra Overcorrection
2. Chocolate Passion
3. Tornado Minority
4. Who's WhoFO
5. EneMe
6. ten to ten ★
7. Serial Number Of Turbo
8. DIE meets HARD
9. High Energy Vacuum
10. #5
(2018/Sony Music
Time/47:00