むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Vargrav / Netherstorm

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Vargrav / Netherstorm


フィンランドブラックメタルバンドによる初フルレングス。


極寒の猛烈なブリザード吹き荒れる素晴らしい作品です。
Satanic Warmaster主宰のWerewolfにサインしていることもあってRawでプリミティヴな音像かと思いきや、そこまで粗くないです。
かといってプリブラの狂暴性もそこかしこにあるのがまず嬉しい。
このVargravはAzaghalでもドラムを叩いていたVRTX氏による独りバンドですが、薄くチープな印象は一切なく、分厚い音像を伴うシンフォニックブラックに近いです。
シンフォニックブラックでもDimmu BorgirやCradle Of FilthというよりはEmperor、はたまたLimbonic Artに近いと言えば近いと思います。
一曲一曲は長い大作志向ですが、M-1“Netherstorm”から聴けるように薄闇の中世的な世界観から一気に宇宙空間に放り出されるスぺーシーなシンセワークが素晴らしい。
それはM-2“Shadow Secret Unmasked”で顕著であり、ブラックメタルらしい悲哀メロディーにまとわりつかせるセンスはトップバンドと比べても遜色つかないのでは。
気が触れたような耳障りなノイズで曲にフックを持たせるM-3“Limbo Of Abysmal Void”や宇宙に行きすぎたあまりにヴォコーダーによるVoを乗せたりするアンビエントブラックM-4“Ethereal Visions of a Monumental Cataclysm”、ファンタジックなSEで戯曲的な雰囲気と幽玄のメロディーによる壮大極まりないM-5“Obidient Intolerant Ensnared”と、様々な要素が雑多にあるのにアルバム全体の不思議な統一感が素晴らしいですね。
エンドロールのようなインストM-6“In Divine Embrace of the Dying Light”で締めるのも、一本の映画を見た後のような心地になります。
プリミティヴブラック、シンフォニックブラック、アンビエントブラックを数珠繋ぎにしながらもしっかりと一つの作品に落とし込むセンスが優れているアルバムです。
ブラックメタルが好きな人ならまず外さない気がしますね。
今作は2017年発表ですが、CD化及びデジタル化が今年に入ってからなので、ベストに入れるには聴くのが遅すぎた作品だったりします。


1. Netherstorm
2. Shadow Secret Unmasked ★
3. Limbo Of Abysmal Void
4. Ethereal Visions of a Monumental Cataclysm
5. Obidient Intolerant Ensnared
6. In Divine Embrace of the Dying Light
(2017/Werewolf)
Time/43:19