むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Watain / Trident Wolf Eclipse

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Watain / Trident Wolf Eclipse


スウェーデンブラックメタルバンドによる6作目フルレングス。


クリーンVoを導入したり、自身の音楽的裾野を拡げるような作風だった前作“Wild Hunt”とは打って変わった直線的な作品です。
今作は初期にだいぶ近い、プリミティブなブラックメタルに回帰しています。
傑作と名高い前々作とも違い、メロディーも辛めで、ブルータルなんですね。
それは猛烈なトレモロを叩きつけるM-1“Nuclear Alchemy”から明らか。
スウェーデンのブラックらしい寒々しさを体現したM-2“Sacred Damnation”は言わずもがな、若干のDsOっぽさを漂わせながらも北欧ブラックの薫りを封じ込める暗黒的なM-3“Teufelsreich”といったメロウな側面もきっちり残しているのが素敵ですね。
ガリガリと引っ掻くようなリフが耳に残るM-4“Furor Diabolicus”や、威圧的なヘヴィネスで荘厳に聴かせるM-8“The Fire Of Power”とツボをつく構成です。
前作が割と不評だったので、そのストレスもあるのかはわからないですが、ボーナストラックを抜くと大体34分程度という走行時間も非常に潔い。
難点は、この音楽性にしてはプロダクションが弱いこと。
アナログで録音したような音像は、苛烈な演奏に反して暖かみすら感じるので、それが少し不満ではありました。
もっとこう、心をささくれ立たせるようなディストーションが欲しかったというか。
はたまたMardukのような圧で押し切る迫力が欲しかったというか。
とは言っても、プリブラの醍醐味は感じ取れるので些末ではあります。
巨大な壁である前々作“Lowless Darkness”を超えているとは思いませんが、なかなかいい作品ですね。
ブラックメタルとしての体裁もきっちり残されているので、前作よりも気に入る方は多いかと思います。
ちなみにボーナストラックは、アウトロ的な曲なので過度な期待は禁物ですよ。


1. Nuclear Alchemy
2. Sacred Damnation
3. Teufelsreich
4. Furor Diabolicus ★
5. A Throne Below
6. Ultra(Pandemoniac)
7. Towards The Sanctuary
8. The Fire Of Power
9. Antikrists Mirakel
(2018/Century Media)
Time/41:52
M-9ボーナストラック(限定版デジパック