むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Noel Gallagher's High Flying Birds / Who Built The Moon?

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Noel Gallagher's High Flying Birds /Who Built The Moon?


UKのSSWによる3枚目フルレングス。



ご存知、美メロ量産お兄ちゃんのソロ3作目です。
先に弟の方がアルバムを出したので、必然的によく比較されて語られていると思います。
それは脇に置いておいて今作ですが、ようやくプロジェクト名にもある“High Flying Birds”が活きた作品になったな、と思いました。
前2作は、どちらかと言えば“Noel Gallagherだったらこうだよね”というメロディー主体のギターロックアルバムで、抜群に良質ではあるものの大きな驚きはそこまでなかったと思います。
今作ではそもそもの作曲すらスタジオに入ってからしたようで、制作方法から変わったことも功を奏した形になっています。
今作は非常に肉感的な作品になっており、奇しくも晩年のOasisが目指した“グルーヴ重視の踊れるロックンロール”の完成形として提示されています。
それはインストであるM-1“Fort Knox”から繋がるトリッピーなダンスロックで賛否を呼んだM-2“Holy Mountain”の時点で明確に打ち出されており、アルバム全体がTalking HeadsあるいはA-haのような躍動感に満たされています。
それでいて、彼らしさが些かも揺らいでいないのは、あくまでメロディーに曲を支配させているところの影響。
ミニマルなエレクトロビートに眩いばかりの美メロを這わせたM-4“It's A Beautiful World” や、空を突き抜けるような祝祭的なサイケポップM-9“If Love Is The Law”がそれを象徴しています。
ゴージャスなポップサウンドにR&Bみたいなコーラスを塗すという今までじゃ絶対やらなかったようなM-3“Keep On Reaching”、重く引きずるラウドなベースが渋さを出すM-10“The Man Who Built The Moon”と、非常に濃密。
たぶんこれ以上に編曲できなかったであろう深いリヴァーヴの効いたVoラインが美しすぎるボーナストラックのアコギとピアノによるシンプルな弾き語りM-12“Dead In The Water”とM-13“God Help Us All”が最も今までの彼らしい曲。
ベテランらしい安定感を損なわない上で遊び心を大事にした作品だと思います。
すぐには大傑作!とはならないものの、聴いているうちにじわじわと大事な作品になる類のものですね。


1. Fort Knox
2. Holy Mountain
3. Keep On Reaching
4. It's A Beautiful World
5. She Taught Me How To Fly
6. Be Careful What You Wish For
7. Black & White Sunshine
8. Interlude(Wednesday Part1)
9. If Love Is The Law ★
10. The Man Who Built The Moon
11. End Credits(Wednesday Part2)
12. Dead In The Water(Live At RTE 2FM Studios,Dublin)
13. God Help Us All
(2017/Sour Mash)
Time/52:31
※M-12初回ボーナストラック、M-13日本盤ボーナストラック