むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

sukekiyo / ADORATIO

f:id:bluecelosia:20171001101540j:plain
sukekiyo / ADORATIO


日本のプログレッシヴ/オルタナティヴロックバンドによる音源&映像作品集。



今はCD1枚のみの通常盤もあるようですが、オリジナルアルバム+コラボレーションアルバム+ライブ/MV集Blu-rayの限定版を購入。
オリジナルアルバム(CD1枚目)のレビューに終始しますのでご了承をば。
Dir en greyのVo京氏のはじめたバンドとして有名ですが、最早そんな冠詞は不要で独自の世界観が研ぎ澄まされました。
さらに言えば前作“IMMORTALIS”やミニアルバム“VITIUM”とも全く違う世界観です。
“VITIUM”までは元々のコンセプトでもある無国籍感がわかりやすかったですが、今作は曲名からもわかるような、日本情緒とエログロセンスが全面的に出ています。
かなり病んだ不気味な音世界に変貌していますが、バンドの状態が透けて見えるほど風通しがよく、演奏がしなやかになりました。
そのため、日本的でありつつ無国籍でタイムレスな雰囲気に仕上がっています。
“オーガニックな歪”という独特さが卓越した演奏技術でより強固になりました。
それでいて、編曲のセンスがいいためか、非常に洒脱。
完成されたグロテスクとでも言うのか、アルバムのどこを削り取っても美意識が感じられる。
メンバー個人のバラバラな美意識が絶妙に溶け合ってsukekiyoという集合体になっているんですね。
これはDir en greyとは真逆で、あちらはメンバーの美意識がぶつかりあって叩き上げられる刃物。
sukekiyoは宝石みたいなんです。
まるでBlankey Jet Cityに対してのSHERBETSみたいな在り方で面白い。
曲自体も個性が恐ろしいほど強く、多面的でころころと表情が変わっていきますが、全体で聴いた時のまとまり方も考え抜かれていて、脱帽するしかないです。
この辺りの曲構築は、Nine Inch Nails等のインダストリアル的な感覚にも通じますし、リフ一つにしても同じものを濫用しないという拘りはCryptopsy辺りのテクニカルデスに通じる感覚もあります。
歪に乱反射していくためアヴァンギャルドでエクスペリメンタルな方向性も感じられるのに、出来上がったものはかなりプログレッシヴロック寄りの作品というのが興味深い。
曲を繋ぎ止めているのが歌謡曲だったりジャズだったりすので、しなやかに曲が変化するためかもしれない。
M-1“擬似ネクロマンサー”から聴ける暴れっぷりも一つの要素でしかなく、崩壊しては再生していくような曲で占められています。
複雑怪奇な曲の中でも一定以上の聴きやすさがあって、独り善がりな作品になっていないのが素晴らしいんですね。
起伏激しいM-3“襞謳”でも軸となるメロディーやギターリフはメタル然とした格好良さがあるし、M-6“艶”やM-13“白濁”のストレートに歌謡っぽさを出したキャッチーな曲がいいカンフル剤になっていたり。
京氏のVoは前作以上に自由で頻度は少ないもののグロウルやスクリームもしっかりあるので、彼の荒ぶりが好きな方も満足できるかな、と。
歌詩の倒錯した世界観、音やアートワークの偏執狂染みた作り込み、sukekiyoというバンドの変態さが全面に出た怪作であり傑作でございます。


1. 擬似ネクロマンサー
2. グニャ結論、そして血眼。
3. 襞謳
4. 純朴、無垢であろうが
5. マニエリスムな冷たい葬列者
6. 艶
7. 首吊り遊具
8. されど道連れ ★
9. 死霊のアリアナ
10. 嬲り
11. 耳ゾゾ
12. 黝いヒステリア
13. 白濁
(2017/sun-krad)
Time/62:16
※メディアブック仕様、CD2、Blu-ray内容は割愛。