むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Obituary / Obituary

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Obituary / Obituary


USのデスメタルバンドによる10作目フルレングス。



USデスメタル史に残るバンドは数あれど、このObituaryも筆頭クラスの重鎮ですよね。
私の思い入れ深い彼らの作品は、“Cause Of Death”や“Darkest Days”ではなく“Frozen In Time”でして、あれの冷たくじめっとした空気でObituaryに入った口です。
今作はセルフタイトルということもあり、非常に気合漲る作品に仕上がっており、“Frozen In Time”収録の“Insane”を彷彿とさせるようなファストな曲が比較的多めです。
とは言っても、Obituaryらしい地獄の沼地に足を取られるようなヘヴィなリフ責めの重苦しいミドルの楽曲は無論健在で、さらに磨き抜かれています。
前作で見せたカラッとした質感は歯切れの良いハードコア要素に昇華され、なかったことになっていないのもこのバンドの良さ。
Obituaryは地味なバンドとよく言われますが、それは半分正しくて半分間違い。
求められる音楽性を損なわず、現在やりたいことを導入するのが非常に巧いバンドです。
Tardy兄弟とTrevor Peresのプロデュース力が非常に長けているのだと思います。
故に、どんなギタリストが参加したとしても、彼らの場合+αで語られることが多いですし、どのアルバムもしっかりObituaryになる。
今作で言うと、正統派メタル寄りの美麗なギターソロを結構ふんだんに盛り込んでおり、地獄の世界観で華を添えています。
それでいてしっかりとObituaryらしい汚泥感も消さない素晴らしい仕事です。
いきなりテンション高いハードコアテイストのデスメタルM-1“Brave”をオープナーに持ってくる辺り、自信のほどが窺えます。
重戦車の如き威圧的なM-3“A Lesson In Vengeance”や沈み込むように邪悪に粘りつくM-8“Turned To Stone”といった楽曲のらしさ溢れる存在感は安定・安心の絶品に仕上がっています。
衰えを感じさせないJohn Tardyの圧殺してくるような咆哮も嬉しくなってきますね。
芯をぶれさせることなく、深化し続ける孤高のバンドであることが頼もしい。
紛れもなく、今作は最高傑作と言っていい作品です。
このバンドの音は叩き上げられた鈍色のハンマーそのものですね。


1. Brave
2. Sentence Day
3. A Lesson In Vengeance
4. End It Now
5. Kneel Before Me
6. It Lives ★
7. Betrayed
8. Turned To Stone
9. Straight To Hell
10. Ten Thousand Ways To Die
11. No Hope
(2017,Relapse)
M-11:初回ボーナス
Time/36:28
※三面デジパック仕様、ブックレットなし