むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Paradise Lost / Medusa

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Paradise Lost / Medusa


UKのゴシックメタルバンドによる15作目フルレングス。


ゴシックメタル”という言葉を生み出したのは彼ら、という暗黙の了解が脇に追いやられてから久しくなりました。
その間、彼らも着々と足を止めることなく、更なる深みへと到達しました。
それが前作“The Plague Within”であり、前作に収録された幾つかのヘヴィな楽曲をさらに掘り下げたのが、今作“Medusa”です。
自らも自負している通り、今作は彼らの作品の中でも最もヘヴィでもあり、またエクストリームでもあります。
とは言え、エクストリームという言葉も鬼門で、昨今想像される“エクストリームメタル”にある現代的な攻撃性を追求したものではないということ。
つまり、原初のヘヴィメタルをより過激に追求したオーガニックな作風。
それでいて、決して懐古に徹した作品ではないということ。
新たに加入した23歳の若きドラマーWaltteri Väyrynenの持ち込んだフレッシュさも関係しているのでしょう。
また、ゴシックメタルの祖たる彼らの凍てつくような耽美性と愁嘆を極限まで煮詰めた非常に重苦しくも美しい作風であることも忘れてはいけません。
ゴシックメタルの究極的な着地点としてデスドゥームがあるということが実に面白いです。
Nick Holmesのグロウルはパワフルではないものの老獪な魔術師のような忌まわしさを感じさせるし、またクリーンの沈み込むような質感もさらに磨き抜かれているように思います。
万人受けしない音楽性ではあるものの、M-1“Fearless Sky”のわかりやすく寒々しいメロディーを筆頭に、躍動するM-2“Gods Of Acient”M-7“Blood & Chaos”の原初的なデスメタルサウンド、何と言っても雪原の吹雪の中で立ち尽くすかのようなM-4“The Longest Winter”の途方もない絶望感などはデスドゥームを通り超えてフューネラルドゥームに近づいているような気配すらあります。
作品を通して一貫しているのは、サバス的な粘り気のあるギターリフの鉈を振り下ろすかのような鉛色の輝きがあること。
その辺りは、UK産ヘヴィメタルバンドとしての矜持も感じます。
“ゴシック”なメタルとは何か、今一度問いながら聴いてみる楽しみ方がある一枚です。


1. Fearless Sky
2. Gods Of Acient
3. From The Gallows
4. The Longest Winter ★
5. Medusa
6. No Passage For The Dead
7. Blood & Chaos
8. Until The Grave
9. Shrines
10. Symbolic Virtue
11. Frozen Illusion
(2017,Nuclear Blast,Ward Records)
M-9~11日本盤ボーナストラック
Time/57:01
※プラケース、24Pブックレット、ライナー付。