むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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White Ward / Futility Report

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White Ward  /  Futility Report


ウクライナブラックメタルバンドによる初フルレングス。



都会的で、イマジネーションを刺激する音象です。
ブラックメタルの中でも、確実にポストブラックに位置づけられると思います。
かと言って、Alcestはじめとするかのジャンルの中でも、淡い感じの音ではなく、かなりしっかりとブラックメタルならではの邪悪さと暴虐性は生きています。
ブラストビートは基本ですし、吹雪くトレモロピッキングも存在感を主張しています。
その中でフュージョン的な流麗さを漂わせる演奏と吹き荒れるサックスが独自の世界観を構築しています。
更に、ダブステップ的なリズムトラックを使用するなど現代的な手法も多く見受けられ、ブラックゲイズ主流のポストブラックの中でも特異さを演出することに成功しています。
とは言え、彼らの本懐はしっかりとメタル然とした強度を殺さない部分。
M-2“Stillborn Knowledge”のように神経を引っ掻くようなトレモロの隙間を縫うようにサックスが流れてくる感じとか非常に洒落ているんですが、そういう曲でもリフの破壊力はしっかりと骨太。
ブラックメタルならではの邪悪さは健在という安心感は、Deafheaven辺りとも相通じるものがあります(音楽性は似ていませんが)。
メインのメロディーも儚い夜を演出しており、割と敷居は低いと思います。
その上で、フュージョンブラックメタルを奇跡的な塩梅で融合できている希有なバンドでもあるので、唯一無二の個性に触れる機会でもありますよ。
秋の夜長にピッタリな詩的な作品。


1. Deviant Shapes
2. Stillborn Knowledge ★
3. Homecoming
4. Rain As Cure
5. Black Silent Piers
6. Futility Report
(2017,Debemur Morti)
Time/40:24
デジパック瀟洒な20Pブックレット付。