むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Khmer / Larga Sombra

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Khmer / Larga Sombra


スペインのクラスト/ハードコアバンドによる初フルレングス。


数々のスプリットやEPを経て、満を持して解き放たれるフルアルバムです。
非常に楽しみにしていた一枚ですが、結論からいくと、待った甲斐あった素晴らしい作品です。
ネオクラストの一派の中でも、前身のIctusからして特異なバンドでしたが、このフルアルバムでその異質さを浮き彫りにしています。
まず、ネオクラストのイメージからくるブラッケンドな黒々しさはKhmerには当てはまりません。
勿論、クラスティーで陰鬱な質感やダークなメロディーは健在です。
ですが彼らのリソース元はやはりメロデス的な哀愁なのだと思います。
彼らのメロディーには、憎悪の黒々しさよりも空洞的な寂寞が吹き荒れていて、荒涼としていて冷たい。
これはブラッケンドハードコアとも違うアプローチで、この追求はほぼほぼ彼等しか成し得ていません。
さらに、演奏はかなり鋭角で、突き刺すような痛みが刻まれています。
そこが、多くのネオクラストバンドとの最大の違いだと思います。
この鋭さこそ、Khmerが持つ生々しさの最大の秘訣だと言っていいです。
その鋭さは例え、M-3“Corriendo Tras El Fuego...”のような短いインストでも損なわれることはありません。
また、M-5“A Este Lado De La Luna”やM-7“Soledad”のある種プログレッシブとすら形容できるような世界観の構築は、彼らの進化と表現してもいいほどの素晴らしさ。
ツインリードかと思いきやシングルギターなのも、彼らの大きな個性ですよね。
絶妙な重さと荒々しさを作り上げるベースとドラムも彼らの鋭さに一役買っています。
ざらつき絶望するような寂しさすら感じさせるスクリームも、非常に生々しい。
ある程度予想できましたけど、そんな予想も遥かに超えていく傑作です。
難点は、ハードコアのアルバムなんでしょうがないけど短いことくらい。後、2、3曲ほど浸りたかったなって。


1. Larga Sombra(I-II)
2. Perdiste El Filo
3. Corriendo Tras El Fuego...
4. El Ardor De La Crueldad
5. A Este Lado De La Luna
6. Lo Que Deja Cicatriz
7. Soledad ★
8. ...Paraver El Mundo Arder
(2017,Wooaaagh,3LA)
Time/24:30
※日本盤プラケース、16Pブックレット(歌詞対訳装丁)つき。

Score:9.4/10