むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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LUNA SEA / CROSS

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LUNA SEA / CROSS


日本のロックバンドによる10作目フルレングス。



復活後3作目、通算10作目というメモリアルアルバムとなった今作には彼等も今までしてこなかった試みがあります。
常にセルフプロデュースだったアルバム制作に初めて外部プロデューサーを入れ、それがU2やRolling Stones等といった著名なアーティストを数多く手掛けたSteve Lilywhite氏を迎えるということ。
UKロックを聴いて育った世代のバンドからすれば垂涎の出来事でしょう。
要は、客観的にジャッジする目を入れたことで自らの音を改めて振り返ろうとした目論見もあったのだろうと思いますが、肝心の作品の出来がこれがまたすこぶるいい。
復活してからのRYUICHIはソロで培った高い歌唱力に定評がありますが、今作はそれを主軸に据えているという印象をまず受けました。
伸びやかなロングトーンで幕を上げるM-1“LUCA”の力強さは今までの彼等にはなかったほどブライトな白々と照らされる満月のような輝きがあり、それが最後まで貫かれています。
図太いビートに繊細なリフが乱舞するキャッチーなコーラスが炸裂するM-2“PHILIA”、彼等らしいダークでドライヴィンなメロパートから一気にバラードを挟むという展開の妙が冴えるM-3“Closer”、感動的とすら言える透き通った歌唱が天空へと吸い込まれていくギターと共に快感を与える珠玉のバラードM-4“THE BEYOND”、重たく黒々としたグルーヴの上でギターが軋むヘヴィロックM-5“You're knocking at my door”が必殺のリフが乱舞する作中屈指のキャッチーさで迫るM-6“宇宙の詩~Higher & Higher~”でゴリゴリ鳴るベースラインへと繋がる様が非常に心憎いですね。
“STYLE”以前を彷彿とさせる陶酔的かつ甘美な歌メロが胸を撃つM-7“anagram”、悲哀に暮れる銀盤のメロディーが物憂げに優しく歌へと絡みつくM-8“悲壮美”、太いベースラインを軸に明るく軽やかなビートロックへと繋ぐM-9“Pulse”、ノンビートにも近い様相を英語によるスポークンワードと歌をじっくり聴かせる壮大なバラードM-10“静寂”、本作を優しく総括する小気味のいいアコースティックな色合いのM-11“so tender...”と過去最高に統一性のある作品に仕上がっています。
バラードアルバムに近い落ち着きと癒しをもたらす印象ですが、しっかり荒ぶるところもあります。
メンバーも50代に差し掛かる頃で、それだけの歴史を存分に味わえる作品と言えます。
雲一つない、黒々とした夜空に冴え冴えと輝く満月のようなアルバムですね。


1. LUCA
2. PHILIA
3. Closer
4. THE BEYOND
5. You're knocking at my door
6. 宇宙の詩~Higher & Higher~
7. anagram ★
8. 悲壮美
9. Pulse
10. 静寂
11. so tender...
(2019/Universal)
Time/54:22