むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

9mm Parabellum Bullet / DEEP BLUE

f:id:bluecelosia:20190909185132j:plain
9mm Parabellum Bullet / DEEP BLUE


日本のロックバンドによる8作目フルレングス。


前作“BABEL”は個人的には傑作で、彼らのアルバムでは最も好きな作品でした。
超攻撃的だった前作には、滝善充(G)のジストニアによるツアー離脱に対しての彼の欲求不満が大爆発していた背景があると思います。
彼が完全復活してから初となる今作は、これまでの爆発的な演奏に加えて、菅原卓郎(Vo,G)のソロで培った歌心がこれまで以上に発露しています。
トレードマークとも言えるギターが荒れ狂うM-1Beautiful Dreamer”を聴けば、ダークだった前作よりも今作のメロディーが爽やかで抜けているのがわかります。
謡曲的な歌メロを高速で聴かせるM-3“名もなきヒーロー”に刻まれた菅原氏のヒーロー像や、2nd“Vampire”を彷彿とさせる艶かしい歌の裏でヒステリックなギターが暴れているM-4“カルマの花環”、うねりまくるベースに甲高いギターが走りスクリームが炸裂するキャッチーでポップなハードコアM-4“Getting Better”までの従来の9mm的な楽曲からも、これまでと違った“抜け感”があります。
決定的なのがM-5“夏が続くから”のメランコリーを重視したフラメンコに通じるギターの爽やかさと、壮大で神聖なメロディーがヘヴィに渦巻くギターオーケストラのようにも聴けるM-8“Ice Cream”、けたたましく弾かれるノイズギターとクリーントーンのギターが性急に交錯するM-10“君は桜”だと言えます。
これらは、前々作“Waltz On Life Line”でいまいち昇華しきれなかった多彩さをより深化させてしっかり9mm印を刻印した楽曲だと言えます。
太いギターラインで魂の重さについて歌い叫ぶM-6“21g”、わかりやすいリフが耳に馴染む成熟した自らの決意表明とも取れる美麗なギターソロも一瞬飛び出すM-9“DEEP BLUE”、そして今のモードを完全に封じ込めた会心の出来であろう忙しなく爆走するドラムに心を掻き乱すギターが乱舞して荒れ狂うM-12“Carry On”に至るまで、手抜かりありません。
前作が滝氏の暗中模索としたフラストレーションを爆発させたダークな作品だったので、激しく物憂げながらも明るさすら感じさせる今作が、いい具合に対比されていると思いました。
この明るさと爽やかさは何だと思ったら、クリーントーンのギターの扱いがめちゃめちゃ巧くなってるのだな、と。
なのに、らしさを殺いでいない。この辺りに今までにない爽やかさと切なさの要因がある気がします。
個人的には前作があまりにも好きだったので今作はそこには一歩及ばないのですが、彼らの作品では上位に来る、ダイハードな9mmファンには今作が最高傑作だと言う人もいそうな会心作であると思います。


1. Beautiful Dreamer
2. 名もなきヒーロー
3. カルマの花環
4. Getting Better
5. 夏が続くから ★
6. 21g
7. Mantra
8. Ice Cream
9. DEEP BLUE
10. 君は桜
11. いつまでも
12. Carry On
(2019/Columbia)
Time/40:32