むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Devil Master / Satan Spits On Children Of Light

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Devil Master / Satan Spits On Children Of Light


USのブラックメタル/メタルパンクバンドによる初フルレングス。



凄まじい熱量を持った作品です。
基盤はブラックメタルにあると思うのですが、スピードメタル由来の原始的な攻撃性と電化処理を施したサイケの妖しい空気、ゴシックロックを吸い込んだ頽廃的なメロディーの鮮やかさを絶妙に混ぜ合わせて吐き出す、という離れ業をやってのけています。
何よりテンションが高く、もったいぶった不気味なインストM-1“Listen,Sweet Demons...”を引き裂くようなM-2“Nightmares In The Human Collapse”の煽りまくるVoやギターの狂った感じがケツまで続くので、ちょっとこれはただ事じゃないな、となるはず。
過剰にかけられたリヴァーヴと追い立てられるようなスラッシュメタルに接近した切迫感が癖になるM-3“Black”Flame Candle、ドラムの乾いたグルーヴにMotorheadの残り香とサイケのいかがわしさを混ぜ込んだM-5“Christ's Last Hill”で見える仄かなドラマ性、沼地に足を取られる重圧感から小気味良いスピードメタルに雪崩れ込むM-6“Skeleton Hand”の構築力は強引でかつ説得力が物凄い。
キャッチーなリフも奇妙に歪んで暴れ回る彼らなりのRolling Stones解釈とも取れるM-8“Gaunt Immortality”、派手で妖しいギターとベースラインの官能的な絡みがそこはかとなくエロいM-9“Desperate Shadow”、80年代の邪悪なメタルをそのまま甦らせたようなギラついた生命力に満ちたM-11“Dance Of Fullmoon Specter”、粘っこいドゥーミーな演奏と暴走する演奏の落差で凄まじい緊張感と危険な香りが充満するM-12“Webs Of Sorrow”ととにかくテンションがアホみたいに高いです。
今作は、ジャンルがどうとか聴いているとどうでも良くなるほどハイになる要素満載で中毒性があります。
おそらく意図的にアナログ的な丸みのある録音にしていると思いますが、そのために尋常じゃないほどの毒気といかがわしさが噎せ返るほど詰まっています。
それもあって万人に薦められる作品ではないのですが、刺さる人には深々と刺さる傑作です。
考えてみれば、サイケ、ゴス、スラッシュ、スピードメタル、ブラックメタル、ガレージパンク、USハードコアを同居させている作品ってそうはないですよ。
気が触れているとしか思えないアートワークも含めて情熱的で偏執的な作品。


1. Listen,Sweet Demons...
2. Nightmares In The Human Collapse
3. Black Flame Candle ★
4. Devil Is Your Master
5. Christ's Last Hill
6. Skeleton Hand
7. Nuit
8. Gaunt Immortality
9. Desperate Shadow
10. Her Thisty Whip
11. Dance Of Fullmoon Specter
12. Webs Of Sorrow
13. XIII
(2019/Relapse)
Time/36:48