むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Gary Clark Jr / This Land

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Gary Clark Jr / This Land


USのブルーズ/ギタリスト/シンガーによる3作目フルレングス。


大地を揺るがすような重厚さと緊迫感に圧倒されるM-1“This Land”にぶん殴られるような衝撃を受けました。
彼の作品を聴くのは今作が初めてですが、凄まじい熱量と情報量を都会的なブルーズロックに落とし込んだ作品だと思います。
Eric Claptonのツアーにも帯同したりグラミー賞を受賞したり、華々しい経歴の持ち主でもありますが、音楽的探求心の貪欲さは今作に裏付けられています。
90年代オルタナティブロック~00年代ラウドロックのような鋭さと重さのあるM-1“This Land”を幕開けに配置し、牧歌的なメロディーを歪んだギターで掻き鳴らすオルタナティブカントリーM-2“What About Us”、ロマンティックで真摯な響きを帯びるAlt-R&Bから緊迫するギターが唸るコーラスが凄絶なヘヴィブルーズに展開するM-3“I Got My Eyes On You(Locked & Loaded)”の構築力の凄まじさにまずは舌を巻くはず。
重たいベースが効いた静かに揺らされるようなM-4“I Wake Alone”、レゲエのゆるいビートと朗らかな歌唱に歪んだギターが絡みつくM-5“Feelin' Like A Million”、一転性急なビートに高らかなギターが鳴り響くロンドンパンクを再現したM-6“Gotta Get Into Something”、管楽器と雰囲気たっぷりなブルーズギターが合わさるファンクロックM-7“Got To Get Up”と、かなり雑多なスタイルを提示しているのに全く破綻していないのは一重に確固たる指標で作品を構築しているのかな、と。
テンポを落として緩くチルな空気を出すM-8“Feed The Babies”、さらにグッと艶を増したロマンティックなメロディーを歪むギターで聴かせるM-9“Pearl Cadillc”、牧歌的なメロディーでのどかな空気を持つM-10“When I'm Gone”、抜けが良く心地好いギターを全面に押し出した明るくレイドバックしたM-11“The Guitar Man”の中盤の落ち着いた流れをM-12“Low Down Rolling Stone”の重たくもオルガンの神聖な空気を漂わせる讃美歌のような雰囲気に落とし込む素晴らしさ。
楽天的なカントリーM-13“Governor”、しっとりとしたメロディーが泣くようなギターで切なく胸に迫るM-14“Don't Wait Til Tomorrow”、最後の最後に万人が思い浮かべる泥臭いブルーズM-15“Dirty Dishes Blues”で本編を〆て終わります。
ボーナストラックも素晴らしく、ワウが心地好く鳴り響くM-16“Highway 71”、立体的なドラムで若干のヒップホップとファンクネスを感じるM-17“Did Dat”と長さを感じさせません。
ボーナストラックを含めると70分超えで長く、しかも非常に濃厚ですが一見サラッとしているので、聴きやすさもあります。
ですが、聴いているとずぶずぶと沼にハマるような中毒性のある大傑作です。
今年はフジロックにも来るようなので、ハマる人も増えそうですね。


1. This Land
2. What About Us
3. I Got My Eyes On You ★
4. I Wake Alone
5. Feelin' Like A Million
6. Gotta Get Into Something
7. Got To Get Up
8. Feed The Babies
9. Pearl Cadillac
10. When I'm Gone
11. The Guitar Man
12. Low Down Rolling Stone
13. The Governor
14. Don't Wait Til Tomorrow
15. Dirty Dishes Blues
16. Highway 71
17. Did Dat
(2019/Warner Bros.Record)
Time/72:26
※M-16,17日本盤ボーナストラック