むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Fallujah / Undying Light

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Fallujah / Undying Light


USのテクニカルデスメタル/プログレッシヴデスメタル/デスコアバンドによる4作目フルレングス。


前作“Dreamless”は大傑作と言ってもいいくらいの出来で、彼らのブレイクスルーとなった作品だったと思います。
ですがバンドの活動は順風満帆というわけでなく、前作発売後に長年バンドのフロントを勤めたVoのAlex Hoffmanが脱退し、Antonio Palermoという人物が加入、また今作レコーディング前後にギタリストのBrian Jamesが脱退しています。
そのため、音楽性は前作の延長線ではあるものの仕上がった今作は質感が以前と異なります。
演奏の大きな路線変更はなく、前作に見られたアンビエントな音処理は大きく減退、女性コーラスはなくなりました。
そういう意味で、暴虐的なデスメタルの要素を前面に押し出して、“Raw”な聞き心地を与えています。
そして何よりVoが与えた変化が顕著。
まず、スクリームとクリーンを操るAntonio Palermo氏のVoは疑うべくもなく巧いです。
ただ、前任が低音グロウルだったのに反して彼は高音域のスクリーム主体なので、オープナーのM-1“Glass Houses”で凶悪で叙情的なギターと噛み合う様はプログレデスというよりもポストハードコアのような印象を受けるはず。
青く透き通るようなギターメロディーの浮遊感とゴリゴリとした演奏の対比が癖になるM-2“Last Light”にはTakenやHopesfallの因子が感じられる叙情派NSHCの印象が終始過ります。
絶叫と青さが交錯する複雑怪奇なリズムチェンジが執拗に追い立てるM-3“Ultraviolet”、重厚で硬質なグルーヴをハーコーなノリで吐き出すM-4“Dopamine”の流れで新生Fallujahのやりたいことが明確にわかります。
雄大なメロディーと反復をじっくりと聞かせてロングトーンのギターがやけに耳に残るM-5“The Ocean Above”、単音リフが耳を引き三半規管を狂わすようなメロディーと共にブレイクを挟むM-7“Sanctuary”、血反吐を吐き散らすような絶叫が演奏の気迫を上回っていくM-8“Eyes Like The Sun”と中盤辺りからプログレデスの面目躍如とばかりの緻密な演奏が楽しめます。
本編ラストを飾るM-10“Departure”の慟哭はHCとデスメタルの中間をいくような印象で、それでもメタルコアとは異なる聴き応えがあります。
変わってしまったロゴと合わせて賛否分かれる作品だと思いますが、こういう作風だと受け入れてしまえば全く悪い作品ではありません。
とは言っても、プログレデスやテクニカルデスのファンよりはポストハードコアや叙情派NSHCファン向きの作品かなと思います。


1. Glass Houses
2. Last Light
3. Ultraviolet
4. Dopamine
5. The Ocean Above ★
6. Hollow
7. Sanctuary
8. Eyes Like The Sun
9. Distant And Cold
10. Departure
11. Dead Tongue
(2019/Nuclear Blast)
※M-11日本盤ボーナストラック
Time/50:03