むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

Windswept / The Onlooker

f:id:bluecelosia:20190315230623j:plain
Windswept / The Onlooker


ウクライナブラックメタルバンドによる2作目フルレングス。


ブラックメタルジブリの華麗な融合と言えば、もののけ姫をモチーフにしたAlcestの“Kodama”が有名ですが、Windsweptの今作はもっと直接的に音を使用しています。
物悲しいインスト序曲M-1“I'm Oldness And Oblivion”を聴けば、日本人なら誰しもが聞き覚えのあるメロディーが聴けます。
それは天空の城ラピュタ
“きみをのせて”の1小節を壊れたオルゴールで流したかと思えば、M-2“Stargazer”でそのまま涙腺刺激の慟哭メロディーを大放射。
そもそもDrudkhの変名バンドと言ってもいい彼らなので非常にエモーショナルで悲しげなメロディーには定評があります。
Drudkhよりも郷愁や悲哀を全面に押し出しているので、爆走推しの楽曲構造に変わりはないですが旧来的なブラックメタルよりも、よりポストブラックに近づいた音作りの印象を受けました。
闇雲に突っ走っているかのように見えてその実やけにひねったメロディーが耳に残るM-3“A Gift To Feel Nostalgia”、乱反射するようなメロディーが物悲しさと共に撒き散らされていくM-4“Disgusting Breed Of Hagglers”、トレモロがブラストと共に猛吹雪を作り出す爆走インストM-5“Gustav Meyrink's Plague”と大爆走ブラックメタルが素晴らしいです。
後半にいけば起伏が生まれるのかと思いきや特にそんなこともなく、王道なブラックのメロディーラインに血反吐を吐くようなVoが耳に残る爆走と疾走の切り替えがやけに熱いM-6“Insomnia Of The Old Men”からひたすら爆走していき、M-1と同じ“きみをのせて”のオルゴールで幕を引く。
ラピュタの物語が根底にあるというよりは、ジャケットの老人がラピュタの民の末裔であり、過去の話を語っているようなそんな世界観を持っています。
作品の展開は潔い爆走に次ぐ爆走であり、いわゆる金太郎飴ブラックですが、どこまでも咽び泣く美しいメロディーが堪能できる秀作です。
Drudkhタイプのブラックメタルファンの方には特にオススメですね。
ちなみにM-5に出てくるGustav Meyrinkはオーストリアの小説家のことだと思われます。


1. I'm Oldness And Oblivion
2. Stargazer
3. A Gift To Feel Nostalgia
4. Disgusting Breed Of Hagglers
5. Gustav Meyrink's Plague
6. Insomnia Of The Old Men ★
7. Times Of No Dreamer & No Poets
8. Bookworm,Loser,Pauper
(2019/Season of Mist)
Time/37:35