むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

Rotting Christ / The Heretics

f:id:bluecelosia:20190301222022j:plain
Rotting Christ / The Heretics


ギリシャブラックメタルバンドによる13作目フルレングス。


今やギリシャを代表するエクストリームメタルバンドと言っても過言ではない大御所です。
来日経験もあって、カルトな音楽性と凄まじいほどのエンターテイメント性を体験できたライヴでした。
今作は、前作、前々作に連なる作品です。
北欧ブラックの寒々しい美しさとはまた違った、宗教色の強い荘厳さ、あるいは地下室の密室性を持った独特のおどろおどろしいメロディーライン。
前作が世界各地の儀式をモチーフにしたものであるなら、今作は表題通り異端者に対する陰惨な拷問がテーマかと思います。
拷問と言っても与える側の陰湿で苛烈な攻撃性や狂暴性よりも、むしろ受ける側の苦悶と死したことへの安堵が表に出ている感覚を持ちます。
語りから威圧的な進軍とクワイアを入り乱れさせる独特のグルーヴを存分に堪能できるM-1“In The Name Of God”から顕著。
乾いたドラムから悠然としたメロディーが雄々しい女性コーラスも舞うM-2“Ветры злые”、妖しくおぞましい儀式を執り行うようなM-3“Heaven & Hell & Fire”、一転突き放すような緩やかなグルーヴが苦悶を刻む陰鬱さを強調したM-4“Hallowed Be Thy Name”と序盤を聴いても彼らの強烈な個性はいささかもぶれません。
空気が変わるのが、怒りを意味する単語の通りアタック感の強いリフを刻むM-5“Dies Irae”であり、劇場型のメロディーにうっすらとコーラスを被せて語りと共に疾走するM-6“Πιστεύω”、詰問するようなグロウルで異端者をなぶるかのような背徳感のあるM-7“Fire,God And Fear”の流れは映画でも見ているような展開を持ちます。
重たく分厚いリフに老人のような語りが絡みつくM-8“The Voice of the Universe”、お経のような語りと壮絶なグロウルが乱舞する演劇性の強いM-9“The New Messiah”、非常に暗い墓に佇むような寂しく鬱々としたメロディーが尾を引くM-10“The Raven”で本編は幕を下ろすのもいい雰囲気ですね。
名匠Jens Bogrenによるミックスも安定の明瞭さで、楽曲の妖しさを損なうばかりか増強しているのは流石。
前作は少し中途半端に感じてあまり気に入らなかったのですが、ここまで徹底されるとぐうの音も出ません。
個人的には前々作が好きすぎたので一歩及びませんが、今作もなかなかいい作品です。
限定盤ボーナスのM-11“The Sons Of Hell”も彼ららしい曲でなかなかいいですよ。
加えて今作、アートワークも非常に拘っていていいですよ。リストバンドの使いどころないけど。


1. In The Name Of God
2. Ветры злые ★
3. Heaven And Hell And Fire
4. Hallowed Be Thy Name
5. Dies Irae
6. Πιστεύω
7. Fire,God And Fear
8. The Voice Of Universe
9. The New Messiah
10. The Raven
11. The Sons Of Hell
(2019/Season of Mist)
Time/47:54
※M-11限定盤ボーナストラック

Score:9.3/10


Rotting Christ-Dies Irae