むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

Soen / Lotus

f:id:bluecelosia:20190213220017j:plain
Soen / Lotus


スウェーデンプログレッシヴロック/メタルバンドによる4作目フルレングス。


OpethのMartin Lopezが結成したということで話題になりましたが、その冠詞は最早不要の境地に達しています。
そもそもOpethよりはToolやA Perfect Circle寄りのスタイルだし、異様なルックスのフロントマンJoel Ekelofの佇まいが醸し出す特異な世界観はさらに色濃くなりました。
前作はプログレッシヴロック然とした要素が濃くてその路線を突き詰めるのかと思っていましたが、今作ではガラリと変え、前作の深遠な世界観を残したままメタリックな強度を増強しました。
M-1“Opponent”からわかるように、今作に前作の温もりある音世界はどちらか希薄で、突き放すような冷たさが張り巡らされています。
重たいリフが心地好いアグレッションと疾走感を生み出しつつうねるグルーヴに漂う歌が美しいM-3“Martyr”や跳ねるようなリフに否応なく身体も揺れるグルーヴと中東の民族音楽みたいな節回しが癖になるM-8“Rival”は明らかに動の要素を増強しています。
厳かな空気の中で悩ましげに歌い上げる祈りにも似た空気が漂うM-4“Lotus”、低く渋い歌がゆったりと神聖な空気を織り上げていくM-7“River”はプログレとかメタルとか考えずとも単純にいいメロディーに酔いしれるはず。
縦横無尽かつ柔軟に静と動を行き交う壮大なM-9“Lunacy”の穏やかさと狂気の交錯には鳥肌が立ちますね。
派手さはなくとも丁寧に作られており、着実に進んできた彼らの足跡が見える素晴らしいアルバムです。
矜持と気品も感じられます。
暗く儚く冷たく、少しだけ暖かな作品だと思います。
聴けば聴くほど良さが染み込んできますよ。
観音開きになっているデジパック仕様の装丁も収集癖をくすぐるいい仕事をしています。美しい。
開くと出てくる蝶を吐き出す敏雄くんのような、DIR EN GREYの京氏のような不気味な少年には面喰いましたけども。


1. Opponent
2. Lascivious
3. Martyrs
4. Lotus
5. Covenant
6. Penance
7. River
8. Rival
9. Lunacy ★
(2019/Silver Lining Music)
Time/54:02