むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Ethereal Sin / Kakuriyo/幽世

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Ethereal Sin / Kakuriyo/幽世


日本のシンフォニックブラックメタルバンドによる4作目フルレングス。


“エレジアックブラックメタル”を標榜するバンドで、Dimmu BorgirやCradle Of Filth辺りに通じるスタイルで、よりChthonicに近づいた音楽性になりました。
エレジアックとはElegiac=挽歌の意。
挽歌とは“死者を悼む詩歌”を意味するので、生死を歌った楽曲が多い彼らには適した言葉なのかな、と。
度重なるメンバーチェンジや、首魁のYama氏によるEvoken de Valhall Productionのプロモーター業の本格化でバンド存続自体が難航していたようですが、元々あったマテリアルを再利用することで今作が完成した模様です。
そのため、Ethereal Sinとしての音楽性は従来と一貫しており、開幕ブラストビートがけたたましく轟くM-2“Thy The Ancient Wyvern/汝の古龍”からド派手なシンフォニックブラックが炸裂しており、最後まで突っ走ります。
重く乱打されるドラムにピュアメタルっぽいリフが唸り歌舞伎のキメみたいなコーラスが乗るM-6“Syuten-Doji/酒呑童子”、派手なリフが乱舞する暴虐的なシンフォニックブラックM-7“Desperate Onslaught/玉砕”の流れは非常に熱いですね。
物悲しいトレモロが吹雪くファストブラックのような暴虐性を見せつけるM-3“Sea Of Sacrifice/回天”、鈴の音とマーチングが奇妙な響きのリフで暴虐的に展開していく曲名が指す通り上月城の戦を想起させるM-5“Battle Of Sayo/佐用に墜つ”、どことなくゴシックメタルのような耽美さと仄暗さを同居させたM-8“Goth And Void/退廃と虚無”、重層的なコーラスを切り裂くようなリフとブラストの嵐が凄まじい熱を放射するM-10“My Reminiscence/我が追憶”のクサメロの波状攻撃にはブラックメタルがどうとか関係なしに悶絶するメタラー諸氏も多いはず。
わかりやすい世界観で押して押しまくる作品ですので、レンジは広いと思います。
明瞭で重厚なメジャー感強めのプロダクションですがきっちりブラックメタルとしてまとめ上げている辺り、意地を感じますね。


1. Dawn Of Yata-Garasu/暁の八た烏
2. Thy The Ancient Wyvern/汝の古龍
3. Sea Of Sacrifice/回天
4. For Whom The Bell Of Ruin Tolls/誰が為に滅びの鐘が鳴る
5. Battle Of Sayo/佐用に墜つ
6. Syuten-Doji/酒呑童子
7. Desperate Onslaught/玉砕
8. Goth And Void/退廃と虚無
9. Kamuy/神威
10. My Reminiscence/我が追憶
11. Last Elegy/最後の挽歌
12. Dusk,In Front Of The Mossy Grave/夕暮れ、苔むした墓の前で
(2019/King Records)
Time/52:54