Slugdge / Esoteric Malacology
UKのブラッケンドデスメタル/スラッジメタルバンドによる4作目フルレングス。
“泥”の意味を持つバンドですが、いよいよスラッジメタルからかけ離れた音楽性になりました。
攻撃的な部分はブラックメタルからの影響がさらに濃くなり、静かなパートでほんのりスラッジ由来の汚泥に片足突っ込んでいる感じが残っているほど。
さらに、テクニカルデスメタルに近いプロダクションにより、輪郭がはっきりしてやけに立体的な音像になっており、もはやメロデスだという意見にも頷けます。
B級映画シリーズがハリウッド超大作に変わったくらいの変化なので、旧来のファンには賛否あると思います。
個人的には、大いにあり。ブラックメタルやスラッジメタルをかけ合わせると、大抵のバンドはポストメタルかフューネラルドゥームに行き着くのですが、このバンドはよりメジャーなメタルの方向。
とは言っても、M-8“Limo Vincit Omnia”のような、不可思議な聴き心地はスラッジをしっかり経由しているのがわかるアングラ寄りの曲を忘れていないのは嬉しいところ。
Mastodonがそのままメロデスを演奏したようなM-1“War Squid”であっても、彼らの抜本にある“軟体動物”というバンドコンセプトは残っているので、身体中を這われるような絶妙な落ち着かなさは保持されています。
気持ち悪くも妙に耳に残るギターにアグレッシヴなドラムが絡んで独特のグルーヴを作り出すプログレッシヴデスの様相を見せるM-2“Crop Killer”、儀式的なコーラスが印象的な粘度のあるリフが反復し伸縮するM-3“The Spectral Burrows”、ブラストビートに寒々しいトレモロリフが絡みつくキャッチーなM-4“Slave Goo World”と、彼らの独特さは揺らぎません。
曲名を見て聡い方なら判るでしょうが、様々なバンドの名曲のタイトルをパロっており、メンバーのメタル愛の深さが伺えるでしょう。
最もスラッジメタルをやっているのは、M-7“Salt Thrower”で、塩に溶かされていくなめくじの断末魔を時に狂おしく、時に美しく描き上げた手腕は見事です。
聴いていると、蛸や烏賊の触手が蠢く姿が見えるような、そんな作品ですよ。
1. War Squid
2. Crop Killer
3. The Spectral Burrows
4. Slave Goo World
5. Transilvanian Fungus
6. Putrid Fairytale
7. Salt Thrower
8. Limo Vincit Omni ★
(2018/Willowtip)
Time/58:39