むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Rei / Rei

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日本のギタリスト/SSWによる初フルレングス。


満を持してリリースされた初フルレングスですが、私が彼女を知ったのはつい最近。
某ラジオ局の今月のヘビーローテーションで一聞き惚れしたことがきっかけです。
最初に知ったのがThe Beatles由来のメロディーラインを可愛らしく聴かせるM-7“Silver Shoes”という、いわば彼女のポップサイド。
そこから過去曲の“COCOA”“Black Banana”を聴いて今作収録の、やけにJET感を強く感じるグルーヴが気持ち良すぎるロックンロールM-2“LAZY LOSER”で完全にK.O.された口です。
今作の特徴として、フルレングスだからこその色彩豊かさが挙がります。
小品であるM-6“Dreamin'”や、穏やかでアコースティックなインストM-12“before sunrise”を最後に持ってくる構成も素晴らしい。
彼女のトレードマークであるブルースを下敷きにしたギターはM-1“BZ BZ”から炸裂していましたが、とにかくルーツの咀嚼が凄いです。
緩やかなポップス的なメロディーラインではThe BeatlesBeckからの吸い上げを強く感じますが、そこにJohnny WinterBrian Setzer顔負けの唸るギターが乗るカタルシス
さらに、彼女が乗りこなすビートは紛れもなく今時のものであり、非常にソリッドでカッコいい。
さらに天性とも言えるリズム感に唖然とします。
特に序盤のM-1“BZ BZ”、M-2“LAZY LOSER”、M-3“My Name Is Rei”の流れはThe Strokes~Jet~Jon Spencerを繋ぐかのような流れで、彼女なりの緩いサーフロックM-4“Follow the Big Wave”、緊迫したサスペンス映画みたいな不穏なギターがのたうち回るビッグなロックナンバーM-5“PLANETS”のフェードアウトしつつも実は綺麗にキメて終わる作り方と言い、非常に洗練されています。
M-6“Dreamin'”、M-7“Silver Shoes”、M-8“Clara”のポップな側面を押し出しつつポップでカラフルなロックンロールという本作を象徴するかのようなM-9“MELODY MAKER”というハイライトの配置の絶妙さ。
もう一曲、エッジの効いたロックンロールか泥臭くヘヴィなブルースやブギーがあれば言うことなかったですが、今作の溌剌な、才能の爆発は抗えないものがあります。
時に舌足らずな可愛らしさと、力強さのある歌声もブルースの泥臭さをいい感じに緩和して日本人にも受けるものに仕上げているのが脱帽ですね。
天才的ですらあるセンスと、それを裏打ちする膨大な努力の蹟であるギターテクニックが入り乱れた傑作です。


1. BZ BZ
2. LAZY LOSER
3. My Name Is Rei
4. Follow The Big Wave
5. PLANETS
6. Dreamin'
7. Silver Shoes
8. Clara
9. MELODY MAKER ★
10. The Reflection
11. Arabic Yamato
12. before sunrise
(2018/Universal Music
Time/41:57