むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Hands Like Houses / Anon.

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Hands Like Houses / Anon.


オーストラリアのオルタナティブロック/ポストハードコアバンドによる4作目フルレングス。


新境地に立ったことを伺わせる作品です。
ポップとハードコアの折衷を程好い疾走感で産声を上げた1st、ポップサイドの美しさを磨き上げた2nd、ハードコアサイドの激しさを鮮やかかつ重厚に聴かせた大傑作3rdと、いい感じに進化と深化を両立させている彼等ですが、今作は少し毛色が違います。
帯にもあるように、アリーナロックの方面のダイナミックなポップロックにシフトしています。
とは言え、セルアウトしたかと言えば否で、彼等らしさは少しもぶれていません。
このバンドの最大の武器は、フロントマンTrenton Woodleyの圧倒的カリスマ性を誇る美声と高い歌唱力。
そこが軸になるのは変わらないので、如何様に音を変化させてもHands Like Housesになるんですね。
実験的な面も強いながらもシンプルかつソリッドでキャッチーなのは間違いなくTrentonの歌があるからです。
ハンドクラップから始まる哀愁ある歌と浮遊感たっぷりのアンビエンスが絡まるR&Bとロックの折衷M-1Kingdom Come”をオープナーに据え、疾走感とノイジーなギターと開放的なコーラスで攻めるグラマラスなM-2“Monster”で確実に層を拡げようという意志が見えます。
少しシューゲイザー的なタッチのギターに熱い歌唱が乗るM-3“Sick”、更にAlt-R&B的なムードを増すシティポップのようなM-4“Overthinking”、その空気を更に深く掘り下げたほとんどR&Bに接近したM-5“Through Glass”とグイグイと聴かせる前半の流れは美しいです。
重たいギターと叙情的なメロディーで憂うように歌うM-6“Half-hearted”から空気が変わり、ポストロック的残響を轟かせるM-7“No Man's Land”や重低音を効かせたエッヂィなM-8“Black”でメリハリをつけ、ギターが唸りを上げて美しい咆哮が宙を切り裂く彼等らしいメロディアスなポストHCを聴かせるM-9“Tilt”、シャッフルのリズムでどことなくMichael JacksonっぽいM-10“Bad Dream”で幕を下ろすのが、面白いですね。
個人的には前作がめちゃくちゃ好きなので、あの続編でないことは残念でしたが、過渡期であることが伺える作品だと思います。
10曲32分とコンパクトな作品なので聴き疲れもしません。
ただまあ、完成度の高すぎるRise期の3枚が大きな壁ではありますね。


1. Kingdom Come
2. Monster
3. Sick
4. Overthinking
5. Through Glass
6. Half-hearted
7. No Man's Land
8. Black
9. Tilt ★
10. Bad Dream
(2018/Hopeless)
Time/32:34