むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Anaal Nathrakh / A New Kind Of Horror

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Anaal Nathrakh / A New Kind Of Horror


UKのブラックメタルデュオによる10作目フルレングス。


“世界で最も暴力的な音楽”を鳴らす彼らの新作ですが、いい意味で変わらず落ち着きません。
ほぼ2年間隔でアルバムを出しているので、音楽性に反して凄く律儀な人たちだな、といつも思っています。
シンバルのみ生でドラムマシンによる激烈なマシンビートや、ブラックメタルを咀嚼してグラインドコアスラッシュメタルなどをブレンドした切れ味鋭く煽情度の高いギター、荘厳極まりないメロディーライン、発狂しているとしか思えないVoといった彼らのトレードマークは不変。
イントロであるM-1“The Road To...”でヒステリックなギターが聴こえ、V.I.T.R.I.O.L.氏の絶叫と共に暴虐的なグラインドコアブラックメタルの蜜月M-2“Obscene As Cancer”に雪崩れる頃には、Anaal Nathrakhのアルバム聴いているんだなと思えるはず。
骨格は変わらないものの、アルバム毎に新味も入れている彼らですが、今作では珍しく音を間引いてBPMを落としたヘヴィなM-4“Foward!”がそれに当たります。
銃を乱射しているようなマシンビートと弾をリロードするSEがとにかくかっこいい。
また、M-5“New Bethlehem/Mass Death Future”やM-7“Vi Coactus”で聴けるのは真っ向から鳴らされたシンフォニックブラックであり、彼らのスタンスがあくまでブラックメタルであることを宣言しているよう。
新たなアンセムになりそうなコーラスが癖になるド派手なトレモロが鳴り響くM-8“Mother Of Satan”、グルーヴィーなベースラインと過剰さを抑えて暴力性を際立たせたM-9“The Horrid Strife”、トドメの一刺しとも言える荘厳なクワイアが神聖さを演出するM-10“Are We Fit For Glory Yet?(The War To End Nothing)”と、絶妙にキャッチーな作品であることが伺えます。
また、楽曲にそこかしこに戦争モチーフが使われていることもあって、ウォーブラック的な側面が強いのも特徴ですね。
彼らの場合、音が弱くなったとかそういうことではなく、聴き手の耳が劇薬に慣れてしまうようなものであるので、全く日和ったりはしていないので、ご安心を。
ここ近年の中でも特に彼ららしさを体現した10作目に相応しい記念碑的作品。


1. The Road To...
2. Obscene As Cancer
3. The Reak Of Fear
4. Foward! ★
5. New Bethlehem/Mass Death Future
6. The Apocalypse Is About You!
7. Vi Coactus
8. Mother Of Satan
9. The Horrid Strife
10. Are We Fit For Glory Yet?(The War To End Nothing)
(2018/Metal Blade)
Time/32:55