むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Bonjour Tristesse / Your Ultimate Urban Nightmare

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Bonjour Tristesse / Your Ultimate Urban Nightmare


ドイツのポストブラックメタルアクトによる2作目フルレングス。


ジャケットがまるでコンテンポラリーなジャズアルバムのようなお洒落さですが、れっきとしたブラックメタルバンド。
バンドと言っても、HeretoirのベースであるNathanael氏による独りブラックです。
Bonjour Tristesseとは有名なフランソワーズ・サガンの小説“悲しみよ、こんにちは”の原題です。
映画にもなっていて、セシルカットブームの火付け役だったことでも知られていますね。
その音楽性は、都会的で冷ややかな音像を持つブラックメタルで、シューゲイザーやポストロックの要素を内包したものですが、幻想的ではありません。
あくまでも都会の闇をうっすらと描くような病んだ空気があります。Heretoirとも異なります。あちらはよりDeafheavenに近い音志向ですし。
AlcestよりはAmesoeursに近いですね。ジャケットも少し似ていますし。
都会的と言ってもEDM要素があるわけではなく、あくまで主軸はギターによるもの。
苛烈なブラックメタルパートの上空で悲しく美しいメロディーが乱舞するM-1“Your Ultimate Urban Nightmare”が今作を象徴しており、ドラマチックな展開が盛り込まれています。
静かで暗い部屋から夜景を遠くに眺めるようなM-2“Like The Scythe In The Ripended Field”、雄大に広がる美メロの中をスポークンワードや喚き声が泳ぐM-3“Alienation”で、彼の描きたい世界観がどこまでも悲痛な叫びなのだとわかるでしょう。
ピアノソナタで深みを持たせるインストM-4“Another Bullshit Night In Suck City”から連なるM-5“One Of The Ghostfolk”のビル群に押し潰されそうな孤独を絶叫するような慟哭が今作のハイライト。
後半にいくに連れてアヴァンギャルドとすら言える摩天楼のような音が深まっていって、M-8“Wavebreaker”で極点を迎えます。
質の高い作品ですが、割と曲の構造は似通っているのが欠点と言えるかもしれません。
ただ一定以上の水準とアグレッションはきっちり保持しているのでオススメはしやすいですね。
アーバンブラックとでも言えそうなこの音楽性、もっと増えて欲しいですね。


1. Your Ultimate Urban Nightmare
2. Like The Scythe In The Ripended Field
3. Alienation
4. Another Bullshit Night In Suck City
5. One Of The Ghostfolk ★
6. The Act Of Laughing In A World Once Beautiful Now Dying
7. Blacktop Prison
8. Wavebreaker
9. The End Of World
(2018/Lifeforce)
Time/44:08