むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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揺らぎ / Still Dreaming,Still Deafening

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揺らぎ / Still Dreaming,Still Deafening

日本のオルタナティヴロックバンドによる2作目EP(ミニアルバム)。


いや、参った。これは参りました。
現行するシューゲイザーというジャンルで最高峰にいきなり躍り出ています。
数多くいる、My Bloody Valentineの子供達の中でもほぼ別格に近い音作りで、ギターノイズの被せ方やそもそもの楽曲がずば抜けていいです。
何より、多くいるシューゲイザーバンドが陥りがちなベースやドラムを置き去りにしていくただギターの音量が大きいだけの仕様ではなく、ドラムの抜けが恐ろしいほどいいですね。
そのため、ドローンが反復する音の重なりにマーチングドラムが乗るインストM-1“B/C”からして心地好さと躍動感が共存しているわけです。
自然な流れで地平線の微かな輝きを表現したような解放される壮大極まりないM-2“Horizon”のSigur Ros感たっぷりな無邪気さ、囁き声がアンナ姉妹在籍時のMumを彷彿とさせるメロディーをなぞりつつ届かない存在を轟音で表現したM-5“Unreachable”のように、ルーツを素直に表出した曲であってもしっかり彼女たちの音に昇華しているのが、年齢を考えても末恐ろしい。
また、M-3“Utopia”の木漏れ日を思わせる歌伴やM-4“Bedside”のJ-popにすら接近したキャッチーで疾走感のあるポップネスすらしっかりEPの世界観に嵌まっているんですよね。
何より波音や風の音すら取り込みゆっくりした歩みで、それでいて大胆かつ激情的に展開する超絶ドラマティックなM-6“Path Of The Moonlit Night”における約11分の旅は絶望的なまでに美しい。
6曲33分という濃密なうねりに、EPであることを忘れてしまえるでしょう。
彼女たちがフルレングスを作った時が、真価を問われる時なのでしょうが、この衝動の赴くままに鳴らされる轟音は否定できないと思います。
個人的には、せっかく叩けるドラムを擁しているのだからAlcestのような世界観も追求してくれると嬉しいですね。
歌詞カードの装丁もブックレットではなく一枚一枚ポストカードのようで、こだわってもいてコレクターアイテムとしても優れています。
恐るべき次世代が日本から出て来て喜ばしいですし、純粋にこの先が気になる存在です。


1. B/C
2. Horizon
3. Utopia
4. Bedside
5. Unreachable
6. Path Of The Moonlit Night ★
(2018/Flake)
Time/33:30