むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Hopesfall / Arbiter

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Hopesfall / Arbiter


USのハードコアバンドによる5作目フルレングス。


今年、Hopesfallの新作を聴けると思った人がどれほどいたでしょうか。
いわゆる叙情派ニュースクールハードコアと呼ばれるサブジャンルの中での立ち位置を名作“The Satellite Years”で確立し、TakenやShai Huludらと共にこのジャンルの頂点に君臨している彼ら。
2008年に一旦解散し、2016年辺りから再結成しての今作です。
“The Satellite Years”が名作とされる理由が、これまでの激情的な音にポストロックの空間的な処理を施し、奥行きのある描写力をハードコアのまま提示したことにあります。
解散に近づくにつれ、ハードコアよりはエモに寄せた作風に変化していましたが、今作は“The Satellite Years”の頃の彼らに解散前後のエモーショナルな風を吹き込んでいます。
いい配分で融合しているのは丁寧にリフを重ねて叩きつけられる激情から鮮やかに浮かび上がるコーラスが爽やかなM-1“Faint Object Camera”から伺えるでしょう。
Hopesfallと言えば宇宙的とも評される独特の浮遊感あるメロディーラインなのですが、今作はそういった要素は幾分控え目です。
そうは言っても、激しいリフを転がすハードコアから天空へ昇るようなコーラスへと表情を変えるM-2“H.A. Wallace Space Academy”、広がりのあるギターメロディーをバックに空中遊泳するようなM-4“C.S. Lucky-One”、静寂を引き伸ばしたようなイントロから壮大なメロディーへと繋がるM-5“I Catapult”辺りは今の彼らを強く感じられるでしょう。
冷たくも暖かい不可思議なメロディーを乱反射しつつ熱っぽく歌い上げるM-6“Tunguska”、作中最もアグレッションの強いハードコアパートと祝祭的なコーラスを繋げるM-8“Drowning Potential”でのライヴを視野に入れたパワフルな曲もなかなかの完成度。
静寂に美しいメロディーを溶け込ませつつもベースでドライヴさせるM-9“To Bloom”の名曲感は半端ないですが、じっくり聴かせる類の作品なので、最初に聴くなら間違いなく“The Satellite Years”ではあります。
ですが今作のメロディーの安定感は素晴らしく、健在振りを示すいい作品ですよ。
美しい夕焼けを想起させる音を夜長のお供にどうぞ。


1. Faint Object Camera
2. H.A. Wallace Space Academy
3. Bradley Fighting Vehicle
4. C.S. Lucky-One
5. I Catapult
6. Tunguska
7. Aphelion
8. Drowning Potential
9. To Bloom ★
10. Indigestion And The Rise Of The Arbiter
(2018/Equal Vision
Time/45:11