むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Arkona / Khram

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Arkona / Khram


ロシアのフォーク/ヴァイキング/ペイガンメタルバンドによる9作目フルレングス。


ロシア最高峰とも言われるらしいバンドですが、フォークメタルやヴァイキングメタルを行き交い陰鬱なブラックメタルに落とし込み時に爆走する楽曲構造に変化はありません。
様々な声色を使い分ける女帝Masha Screamの歌唱はますます冴え渡っていて、凄まじいことになっています。
朗々としたクリーン、童女のような囁き、老婆のようなしわがれた呪文、ハイピッチのグロウルなど恐ろしく振れ幅が大きいです。
過去作品と比べると幾分陰鬱さを増し、キャッチーさは大きく減退していると思います。
その分味わい深い作品になっているのですが、大作主義が極まっているため、大きく間口を狭めています。
その最たるものが、シンフォニックなブラックメタルやダブのような電化処理を施したパートを入り組ませて展開するM-3“Tseluya Zhizn”です。
この曲は17分あるのですが、Voの多重録音や重苦しい管楽器の音色など飽きさせない工夫がいたるところにされています。
暴虐的で作中最高にキャッチーなM-2“Shtorm”の後にぶっ込まれる魔界なので実にサディスティックなバンドだなと。
さらに反復を多用して深淵を覗き込ませるヴァイキング由来の幽玄たるこちらも大曲M-4“Rebionok Bez Imeni”、複雑なリズムで舞踏するような儀式的な世界を提示する雄大なM-5“Khram”、物悲しいメロディーが胸に迫る比較的ストレートに聴かせるペイガンブラックM-6“V Pogonie Za Beloj Ten'yu”、反復するリフを銀盤の絶望的なメロディーでなぞり悲痛な絶叫を絡めるもメロディアスなM-8“V Ladonyah Bogov”といった癖のある曲がずらりと並ぶため、飲み込むのに非常に苦労します。
作品全体が陰鬱で暗いトーンで統一されており、なおかつデプレッシヴブラックのように反復が主軸となっているため、聴く人は大いに選ぶと思います。大作志向の長い作品なのも拍車がかかっていますしね。
一定以上のアグレッションを滾らせる暴虐性もあるので、かっこいいアルバムではありますが個人的にもう少しコンパクトだと言うことなかったですね。


1. Mantra(Intro)
2. Shtorm
3. Tseluya Zhizn'
4. Rebionok Bez Imeni
5. Khram
6. V Pogonie Za Beloj Ten'yu
7. V Ladonyah Bogov ★
8. Volchitsa
9. Mantra(Outro)
(2018/Napalm)
Time/74:05