むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Cryhavoc / Sweetbriers

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Cryhavoc / Sweetbriers


フィンランドメロディックデスメタルバンドによる初フルレングス。


日本盤も次作では発売されていますが、案外珍しい初期のSentencedと共通項を見出だしやすいスタイルのバンドです。
故にそのメロディーは耽美さを存分に湛えつつも冷たく泣き叫ぶようなもの。
この耽美さは“The Mind's I”期のDark Tranquillityに通じます。当時のDTのバンドロゴに酷似していますしね。
とは言っても、それらを高次元で融合させ、荒っぽいメロデスに仕上げたことにより、ありそうでない一風変わった個性的な音になっています。
ただ注釈をつけるなら、昨今のメロデスのようにエグいグロウルはありません。ダミ声と紙一重の荒っぽいシャウトに近いのですが、これが案外耽美さと合っていて湿っぽくなりすぎないんですね。
バッキングはゴシックメタルメロデスなわけですが、このVoのおかげで巧くブルージーな質感を保つことに成功しており、奇しくもPoisonblackのプロトタイプのような感覚。
耽美なギターフレーズを躍動させるいきなりドラマティックなM-1“Bloodtie”からわかるように、作品は結構アップリフティング。
ブルージーなフレーズからふくよかさを増しながら絶望的なメロディーをダミ声が丁寧になぞる慟哭に咽ぶM-2“Repent(Whore)”、ノリのいいベースとドラムがささくれだっていていい渋味を感じる疾走するM-3“Come With Me”、闇夜の雪原を駆け抜けるようなギターメロディーをじっくり聴かせるサビがやけにキャッチーなM-4“Wolfdance”、絡み合うツインリードがザクザクと突き進む暴虐一歩手前の荒ぶるM-5“Pagan Uprise”、疾走パートではほとんど絶叫に近い悲痛さのVoが幽玄なギターに乗せられるM-6“I Fade Away”、さらに重心を下げてバキッとした演奏に噛み付くVoが映えるM-7“Armageddon Y'Know”、ブリブリとしたベースがめちゃくちゃに曲をかき混ぜ最後にはブラストビートまで飛び出すM-8“Misantrophy”と当時のシーンの充実ぶりを伺わせる出来。
荒々しくパンキッシュな勢いが非常に魅力的で、キャッチーすぎる物悲しく耽美なメロディーの良さも実に素晴らしい、今から20年前の作品ですが色褪せない隠れた傑作です。
色々丸出しのジャケットの感じもゴシックメタル的。はい、ジャケットに釣られました。
再結成してほしかったですが、VoであるKaapro Ikonen氏は残念なことに2016年に病没されています。


1. Bloodtie
2. Repent(Whore)
3. Come With Me
4. Wolfdance
5. Pagan Uprise
6. I Fade Away
7. Armageddon Y'Know
8. Misantrophy ★
(1998/Spinefarm/Nuclear Blast)
Time/32:53

Score:9.7/10


Cryhavoc - Bloodties