むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

Lo Moon / Lo Moon

f:id:bluecelosia:20180306220936j:plain
Lo Moon / Lo Moon


USのエレクトロポップ/オルタナティヴロックバンドによる初フルレングス。


極めて繊細な美意識を感じさせる作品です。
音楽性は案外シンプルに、メランコリックな哀メロをダウンテンポなリズムに乗せて展開していくスタイル。
“Ghost Stories”期のColdplayによく似た内省的な音世界に浸らせてくれますが、よく聴くとPrinceやRobert Grasperを通過したようなファンクネスや、Flying Lotus以降のビート感、あるいはブリストル勢の冷えきった空気を感じ取れるはず。
M-1This Is It”の沈み込んだ音像から仄かに開放し高揚していく様は、このバンドが実はスタジアムロック的肉体性も持っていることが伺えます。
ハンドクラップとシンセが乱反射して万華鏡のように広がっていくM-2“Loveless”、The XXへの解答とも取れる物憂げなシティポップM-3“The Right Thing”の流れは、この手の繊細なロックが好きな方にはたまらないものがあります。
音数をどこで減らし、また増やせば響くポップスとして機能できるかを本能的にわかっていると思います。
故に、複雑なリズムトラックを端正に織り上げた内省的なM-5“Tried To Make You My Own”や、反面高揚させるコーラスをヴァースで弾けさせるシルキーなR&Bとエレクトロポップの甘い融合M-7“Real Love”を違和感なく溶け込ませられるのでしょうね。
神聖で張りつめた荘厳さを感じさせるメロディーを漂わせるM-8“Camouflage”は90s~00sのUKロックへの憧憬を形にしたような美しさを放ちます。
全体的に静かな熱を保ったままですが、躍動感あるリズムで踊らせるM-9“Wonderful Life”といった曲を後半に仕込む辺り、今作がアルバムの統一感を考え抜かれて作られている、ある意味で時代と逆行している作品であるとも言えるかもしれません。
メロディーのタイプやVoのタイプから、まだそこまでオリジナリティは感じさせませんが、ローファイではなくしっかりと聴かせる作品として昨今の新人ではなかなかいなかったバンドだと思います。
メンバーのルックスも美男美女なので、これからより注目を集めることでしょう。


1. This Is It
2. Loveless
3. The Right Thing
4. Thorns
5. Tried ToMake You My Own
6. My Money
7. Real Love
8. Camouflage ★
9. Wonderful Life
10. All In
(2018/Columbia)
Time/49:19