むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

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Solstafir / Berdreyminn

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Solstafir / Berdreyminn


アイスランドのポストメタル/プログレッシヴロックバンドによる6作目フルレングス。


雄大かつ寒々しいメロディーを沈み込むようなヘヴィネスと揺らめきたつようなアンビエンスで際立たせる。
前作“Otta”で見せた大自然への畏敬を感じさせる世界観をさらに増強しつつ、メタル然としたアグレッションを少し揺り戻した作風です。
とは言え、ブラックメタルらしさは精神的なものに感じる程度で音そのものからは皆無と言っていいです。
残響を活かしたギターサウンドは相変わらず溜息が出るほど美しく幻想的で、現実感が乏しい。
その美しさに、ヴァイキングっぽい深みのあるダミ声Voが乗ると、Solstafirとしか言えない独特の世界観が広がります。
彼らの音楽性はギターやシンセから感じる女性的なたおやかさや慈しみと、Voや生々しいドラムから放たれる雄々しさ、それらが一つに混ざって、唯一無二の不可思議な音に収斂するんですね。
Voのアイスランド語と英語が入り混じる歌い回しも、独特のペイガニズムに溢れていて、彼らの出自が消されていないことに嬉しくなります。
その、彼らの音世界の大きな個性でもある二面性はM-1“Silfur-Refur”から感じ取れます。
この曲でも聴けるモノトーンで幽玄の景色は反復するビートがクラウトロックっぽさすら感じるM-8“Bláfjall”まで統一されているのが大変素晴らしいですね。
ニューウェイヴっぽいシンセに寂しげなメロディーが乗るM-2“Ísafold”や気の遠くなるような世界を繰り広げるM-3“Hula”のアンビエンスを重視したポストメタルでも彼らの美意識は透徹しています。
ロマンティックとすら言える美しいM-5“Hvít Sæng”は、Solstafirだからこそ出せる男の哀愁溢れるウェスタンな曲で渋いです。
様々な音が自然に溶け合い、独自の世界観が更なる高みへ到達したと思わせる逸品です。
Sigur RosBjorkもそうですが、アイスランドという土地柄はとにかく不思議な音楽をダイナミックに伝える才能に長けた人たちが多いですね。
大自然への畏敬、崇拝、そして人生の厳しさや暖かさが共存した素晴らしいアルバムです。


1. Silfur-Refur
2. Ísafold
3. Hula
4. Nárós
5. Hvít Sæng ★
6. Dýrafjörður
7. Ambátt
8. Bláfjall
(2017/Season of Mist)
Time/57:22