むじかほ新館。 ~音楽彼是雑記~

「傑作!」を連発するレビューブログを目指しています。コメントは記事ページから書込・閲覧頂けます。

Satyricon / Deep Calleth Upon Deep

f:id:bluecelosia:20171017222525j:plain
Satyricon / Deep Calleth Upon Deep


ノルウェーブラックメタルバンドによる9作目フルレングス。


ブラックメタル黎明期からコンスタントに活動し続けているバンドです。
前作“Satyricon”とライヴアルバム“Live At The Opera”で、集大成的世界観を見せた彼らの新作ですが、これまでと決定的に違うのがプログレッシヴとも言えるほど曲が入り組んでいて複雑だということ。
“Revel Extravaganza”から拡張しているダイナミックかつ暗黒のグルーヴはすでにトレードマークなので不変ですが、リズムパターンの多彩さが、複雑怪奇とすら言える今作の最大の要因。
ブラストこそ頻度が少ないものの、金物のおかずを入れたり、テンポを急激に変えたりまさに八面六臂の手数足数。
このダイナミズムはFrostでしかありえないし、彼とSatyr以外では真綿を締め上げるようなグルーヴを作り得ない。
Satyrのギターも厭世的な色合いを濃く押し出しつつ、よりメロディックなプレイを心がけています。
新しいヴィジュアルから“The Age Of Nero”辺りのスタイルに戻すのかとも思っていましたがそうでもなかったのが、溢れんばかりの創作意欲を感じます。
即効性の高いM-1“Midnight Serpent”を持ってくる辺り、彼らの攻めの姿勢が伺えます。
奇妙でキャッチーなメロディーラインと原始的な太鼓のリズムが癖になるM-2“Blood Cracks Open The Ground”で牽引していき、神経を磨耗していくようなブラックメタルのM-3“To Your Brethren In The Dark”とらしさ溢れる流れで嬉しくなりますね。
それが一転するのがM-5“The Ghost Of Rome”の寂漠としたメロディーからM-6“Dissonant”のサックス吹き荒れるアヴァンギャルドな新境地。
無論、Frostのドラムの嵐が荒れ狂うM-7“Black Wings And Withering Gloom”も一筋縄ではいきません。
初聴では曲が進めば進むほど迷い込む難解な感覚はありますが、聴いていくと徐々に侵食される強い中毒性は変わらず。
安定の黒い殺気に満ちた麻薬のようなアルバムです。
自分の欲する音をこうまで的確に提示されると、まだまだ信者はやめられませんね。


1. Midnight Serpent
2. Blood Cracks Open The Ground
3. To Your Brethren In The Dark
4. Deep Calleth Upon Deep
5. The Ghost Of Rome ★
6. Dissonant
7. Black Wings And Withering Gloom
8. Burial Rite
(2017/Napalm)
Time/43:29